そのリッツ・カールトンをビジネス・パートナーに選んだのがスリアワン氏だ。バリ島にホテルを造るにあたり世界中のホテルを回った中で、「世界一を目指すには、リッツ・カールトンと組む以外にありえない」と確信し、リッツ・カールトンにマネジメントを委任して1996年リッツ・カールトン・バリ リゾート&スパが誕生した。
ラグジュアリーな施設、海を望む絶好の立地とリッツ・カールトンの卓越したブランド力、ホテルマネジメント力が融合し、リッツ・カールトン・バリはオープン当初から評判を呼んだ。トラベル&レジャー誌の「第9回ワールド・ベスト・アワード」を受賞(世界のベストホテル第1位/250ドル未満のカテゴリー/04年)するなど数々の賞を得ながら、ホテルビジネスを軌道に乗せていった。
ところが06年4月、リッツ・カールトン・バリに強敵が現れた。わずか5キロ足らずの距離にあるウルワトゥ地区に、ブルガリ ホテルズ&リゾーツ・バリがオープンしたのだ。ブルガリ ホテルズ&リゾーツは、ブルガリと、リッツ・カールトンの親会社であるマリオット・インターナショナルとのジョイント・ベンチャーである。
リッツ・カールトンは98年にマリオットに完全買収され、傘下に収められていたのだ。ブルガリ・バリのオペレーションは、表に名前は出ないもののリッツ・カールトンが行うこととなった。
ブルガリ・ホテルは、バリに先駆けてイタリア・ミラノにオープンしており、ブルガリのブランドとデザイン、リッツ・カールトンのホテルマネジメント力のコラボレーションは、ラグジュアリー市場において高い評価を得ていた。
しかし、バリでのオープンには問題があった。
リッツ・カールトンとカラン・マス社が交わしたホテルマネジメント契約書の2・7条「地域独占契約条項(a)」にはこうある。
「リッツ・カールトンは、リッツ・カールトン・バリ開業後10年間は、バリ島内に、リッツ・カールトン・バリの事前の許可なくリッツ・カールトンのブランド権を使用したリゾートを開業あるいはマネジメントしない」