「勝てたらラッキー」から脱皮

選手たちには、『セブンズ文化』を築きたいとの思いが強い。WSのすべての大会に参加することで、男子セブンズの力量も人気も向上する。坂井が「少しずつセブンズの文化が芽生えてきている」と漏らせば、桑流水裕策主将(コカ・コーラ)は「セブンズ文化とは、負けない文化」と言った。

「正直、かつては大会の週の初めに招集されて、週末に試合をすることが多かった。それでイングランド、ニュージーランドに勝てたらラッキーという程度の気持ちだった。それが今では、準備を含めて、全然違う。どんな相手にでも勝ちにいく。そういった状況が負けない文化をつくるのです」

大相撲に例えるならば、WSコアチーム入りした日本は幕内で本場所を戦えるようになったようなものだ。十両力士で、時たま幕内の前頭あたりと戦っていてもたかが知れている。やっぱり、三役クラスと毎場所戦うことで地力がついてくるのである。

地力がつけば、負けない文化が築かれることになる。五輪でメダルをとれば、セブンズ人気も上がる。セブンズをやりたくなる子どもたちも増えていく。好循環をたどり、セブンズが生活の一部になる日がやってくるかもしれない。それがセブンズ文化。

リオ五輪まで、あと3カ月半。セブンズ文化をつくる夢を抱きながら、選手たちはハードワークに明け暮れるのである。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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