なぜイングランド戦は「負けても楽しかった」のか
ラグビーW杯が開催中だ。開催国フランスとの時差で、各試合のキックオフが真夜中および朝方のため寝不足の日々を送っている。
ここまでの日本代表を振り返ると、初戦のチリには42–12で危なげなく勝ち切った。W杯初出場国の勢いに押されて先制トライこそ許したものの、ほどなく逆転し、その後は着実に点数を重ねた。格下相手にその実力を見せつけたといっていい。大会前の不振を払拭するには十分な内容だった。
続くイングランドには12–34で敗れた。点差をみれば完敗だが、試合内容は決して悲観するものではなかった。懸念されたスクラムは互角以上に渡り合い、身体が大きく突破力のあるランナーの前進をことごとく阻んだ。試合終了間際のゴールラインを背にしての懸命なディフェンスには、思わず目が釘付けになった。
強豪国を追い詰めた戦いぶりに胸が熱くなった
日本代表は、プレーが途切れるたびに全員で円陣を組み、挑戦者らしい真剣な表情で互いにコミュニケーションを取っていた。そうしてチームの一体感と個々の士気を保ち続けたからこそ、後半16分まで勝敗の行方がわからない展開に持ち込めたのだと思う。これとは対照的に、思うようにプレーできないイングランドの選手たちは、一様に焦りの表情を浮かべていた。強豪国を追い詰めた戦いぶりに胸が熱くなった。敗北という結果は悔しいが、実にいい試合だった。
3戦目のベスト8進出を賭けたサモア戦は、28–22で勝利を収めた。最終的な点差こそわずかながら、先制トライを奪ったあとは一度もリードを許さず勝ち切った。劣勢が見込まれたスクラムを五分に持ち込み、サモアが得意とする縦への直進的なアタックを止め続けたディフェンスが、勝因だった。
残るは予選プールの最終戦のアルゼンチン戦だ。互いに決勝トーナメント進出がかかる大一番が、10月8日に行われる。意地と意地のぶつかり合いが、いまから楽しみで仕方がない。