「完璧な仕事をしたい」心理が、幸せ時間を侵食

時間を浪費してしまう根っこにある心理や感情には、「何事も完璧にやりたい」というものもある。いい加減な仕事はしたくない。その仕事哲学は正しく美しい。しかし、度が過ぎると時間ばかり食ってしまうことになる。

「予定通り仕事が進まないと時間を浪費した気分になります」(30代男性)

アンケートの自由回答にもこんな声があった。午前中にプレゼンの資料を仕上げる予定だったが、出来に満足いかずに、結局、午後の仕事を終えたあと深夜残業。なぜ満足できなかったかといえば、パワーポイントのプレゼン資料のビジュアル(グラフなど)をよりインパクトあるものにしたかったから。似たような事例で、時間をロスした経験を持つ読者は多いだろう。

「一概には言えませんが、プレゼンはデザインや見た目より、中身が大切でしょう。細部にまで自分のこだわりを貫き通していたら、いくら時間があっても足りないのですから、効果的な妥協をするべき。つまり、メリハリです。最重要ポイントに力点を置き、その他は時間と手間とコストのバランスを考える。そんな最善主義こそ多忙な現代のビジネスパーソンに必須の仕事スキルだと思います。でも、私が企業研修やクライアントとのセッションをするなかで感じるのは、責任感の強い日本人の8割は、やはり完璧主義的なワークスタイルだということ。結局、侵食されるのは、家族との時間や自分の趣味の時間なんですけれどね」(古川氏)

全部100点の「ベスト」ではなく、及第点の「ベター」を目指す。また、こうあらねばならぬ、という自らに課した厳しい縛りやルールを少し緩める。そうしたゆとり感が、時間泥棒を少し減らすことにつながるのである。

しかし、完璧主義の癖はそう簡単には払拭できないに違いない。

「ひとつの仕事に没頭しすぎるあまり視野が狭くなってしまうことが多いのが完璧主義の人の短所。私がよくアドバイスするのは、別の視野も持つようにしてください、ということ。他の仕事のことや、仕事とは別に自分の人生や生活ということにも目を向けてほしいのです。あるひとつの仕事にのめりこみ、その作業に追われてばかりで俯瞰することをしないと、エネルギーの配分バランスが悪く、人生の幸福度を最大化することもできません」(同)

古川武士
関西大学卒業後、日立製作所などを経て、オリジナルの習慣化理論とメソッドを開発。個人向けセミナー、コンサルティング、企業セミナーなどを多数開催。著書に『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』など。
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