原理原則を確立していたから、どんな質問にも答えられた
僕は政治家として、議会だけではなく、メディアとのコミュニケーションにも力を入れました。定例の記者会見に加えて、立ったままで記者の質問に答える朝夕の「ぶら下がり」取材にも積極的に応じました。ここまで真摯にメディアと向き合う政治家は珍しいとさえいわれましたよ。
ぶら下がりのときはもちろん、定例会見でも、役人がつくった想定問答集のたぐいは一切なし。ただし、準備をしていないわけではありません。本質的なところまで掘り下げたうえで、理論構築をし、自分の原理原則を確立するという作業を常に繰り返してきました。
原理原則を見極めていれば、どんな質問に対してもペーパー(想定問答集)なしで答えられます。話が膨らみすぎて、記者から言葉尻をつかまえられるという苦い経験もたくさんしましたが、本質のところで間違ったことは一度もありません。
会見では、自分が答えられるところは自分で答えますが、知らないことは「知らない」という。ときには事実関係を間違えることもあるわけです。その場合は、翌日すぐに訂正する。
僕からすれば当然のことですが、役所の世界ではそれはたいへん異例のことでした。
「えっ? 知事が間違ったことをいうのか! 後からの訂正でいいのか!」
あとから聞くと、大阪府庁にはこんな驚きが広がったといいます。それだけ「官僚の無謬神話(優秀な官僚・行政組織は間違いを犯さないものだという思い込み)」に毒されていたということで、役所の人たちがかわいそうに思えました。もっとも、大阪府庁や大阪市役所はその世界からもう脱却していますけどね。
※本記事は、PRESIDENT 2016年4.18号掲載記事のダイジェストです。