上司のタイプ別「逆張り」で攻めるアプローチ術

説得の方法は、上司の性格によって変えると効果的です。基本は相手の性格と逆の手段をぶつけること。ガミガミ叱るような上司に、「違うじゃないですか」と食ってかかるのは揉めるだけなので、攻めには受けで対応する。争わずに「そうですね」と流して、別のタイミングで話しかければいいのです。

上司が行動的な性格だったら、情熱的でものわかりがいい半面、思い込みが強い弊害がありがちなので、ポイントを客観的に説明します。自己保身的な性格は自分でひいた路線の上を歩きたがるので、改革的な意見を主張しないほうが賢明です。大体がその上の上司の顔色をうかがって案件を判断していますから、本人よりもその上司を説得したほうが話は早いでしょう。

最大の問題は、石橋を叩くだけでも進まず、はてには壊してしまうような優柔不断な性格の上司です。このタイプにはどんなにわかりやすい説明をしても、何かをやろうという気がないので、時間をかけるだけムダ。取りつくしまがないのですが、この手の上司に対して私はメリットだけでなく、デメリットも説明して、なるべく具体的な話をするように努めてました。というのも、このタイプにウソをつくのは一番危険な行為だからです。基本的には何もやりたくないので、却下する理由を探しており、そこでウソを見つけようものなら格好の餌食。執拗に攻められ、説得しようにも話が本論からずれていきます。

今回、私は読者に部下のウソを見抜く方法を一部伝授しました。しかし、それは叱責することが目的ではありません。時にはだまされたフリをすることも大事です。努力した部下が報告書で些細な形式的部分をごまかしていたら、見過ごして「大変だったな」「また頼むぞ」と一言かければいい。そう声をかけられた部下は上司の洞察力を知り、「あっ、この人にはバレてる」と心から改めるものです。

上司の最終的な目的は、部下に愛情を持って接し、育てること。その点は警察でも企業でも、大きな違いはないはずです。

(元警視庁捜査第一課長 久保正行 構成=鈴木 工 撮影=市来朋久)
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説明が下手で、相手を説得することができません