【2】新しい仕事はどうやって探せばいいか
転職を考える際、がん経験者はどうやって仕事を探したらいいのだろうか。通常の求職にチャレンジするのももちろんいいが、桜井氏のCSRプロジェクトなど、がん経験者と企業をマッチングする復職支援サービスを利用し、治療と仕事を両立させる人も少しずつ増えてきている。
また、それまでの自分の人脈を生かして就職活動するという方法もある。
「知人・友人に思い切って助けを頼むことも必要。身近に相談者を持っておくことが大切なのです。特に男性はひとりで抱え込んでしまう傾向があります。家族にも打ち明けにくかったら、相談支援センターや私たちの電話相談などを活用してほしい」(桜井氏)
ただ、悩ましいのが履歴書の「健康状態」の欄だ。どう書けばいいか。
「一般的には職務遂行に対する健康状態なので既往症や病名を書く必要はありません。ただし、職務に影響を及ぼすことは書いたほうがいいです。例えば、『持病により月1回の通院が必要ですが、職務に影響はありません』など。ネガティブな印象だけで終わらないよう、プレゼンテーションを工夫することが大切です」(同)
面接の段階では、がんのことをどう話せばいいのだろう。治療期間はキャリアの空白期間となる。そのことを指摘されたら……。
「残念ながら、がん経験者、がん治療中という理由で不採用という判断を下す企業が少なくないことは事実です。がんのことを面接で言うべきかの判断は人によって分かれるところです。とはいえ、そもそも採用面接の一番の目的は応募者のスキルや能力を知ること。人事部は会社にどんな貢献をしてくれるのかに興味があるのです。がんを逆手にとって自己PRをすることも一手かもしれません」(同)
桜井氏によれば、がんをマイナスのアクシデントとしてではなく、がんになって人の痛みがわかるようになった、人に支えられることのありがたさ、家族の大切さを再認識した、などとプラスの人生経験としてアピールして再就職した経験者も少なくないという。
「がんで療養していたという事実は変えられませんが、がん体験者としてのたくましさが備わっていれば、面接官に与える印象はかなりよくなるはずです。私は『がん体験はかけ算になる』と信じています。面接時にがん体験を生かした事業プランや企画書を提出して、通常の就職活動において見事採用された人も実在します。短所を上回る長所を持っていること、これをアピールする努力が必要です」(同)
1967年、東京都生まれ。30代でがんの診断を受ける。自らの経験や社会経験から小児がんや働き盛りのがん経験者支援の必要性を感じ、患者・家族の支援活動を開始。日本でのサバイバーシップを広げるべく、東奔西走中。