リスニング重視が正しい理由

一方、進歩がない人が単語に時間をかけるのは、どうしてなのか。

「TOEICは、簡単な英語を速く反応する能力を問うテストで、大学受験とは別種のものです。昔の成功体験を忘れられず、TOEICも同じ勉強法で取り組んでしまう人が少なくない。単語重視も、その一つ。進歩がない人は、単語を暗記すれば点数が取れた学校英語から脱却できていないのです」

続いて、各ジャンルの学習方法を比較した。リスニングで「同じ英文を何度も聴く」のか、「いろんな英文をたくさん聴く」かを聞いたところ、進歩がない人の67.7%が「同じ英文」派で、伸びた人の54.7%を上回った。

「伸びた人も過半数が『同じ英文を何度も聴く』と答えたように、反復練習は大切です。ただ、筋肉をつけるときとダイエットのときでバーベルの重さを変えるように、リスニングも目的によって負荷を変える必要があります。音声を習得したいときは簡単な英文、文法や語彙を習得したいときは難しい英文が適切。進歩がない人は、そこを間違えているのかも」

リスニングで「最初から英文を見て聴く」か、「まず英文を見ないで聴く」かという質問では、「見ないで聴く」と回答した人が、伸びた人で67.5%、進歩がない人では50.3%。どちらも見ないで聴く人が上回ったが、伸びた人にその傾向が強かった。

リスニングした英文を音読する人は、伸びた人で50.3%。それに対して、進歩がない人では39.8%と、やや少ない。通常のTOEICにスピーキングの出題はないが、どうして音読したほうがスコアは伸びやすいのか。

「自ら発音することで、音の違いを意識するからでしょう。たとえば英語にはアに近い母音が5つありますが、それぞれを正しく発音できない人は、リスニングですべてカタカナの『ア』に聞こえて混乱してしまう。リスニング力を高めたければ、正しい発音を音読で身につけることが第一歩。そうすれば、リスニングも伸びるはずです」