プラス100点は簡単です
600点台まではどちらかと言うと、テクニックより英語の地力を伸ばすことに主眼を置いた学習メソッドだった。だが、すでに700点台のスコアがあるのなら事情は異なる。そもそも基礎が備わっていなければこのレベルには達しないし、自分なりに勉強もしているだろう。
だが、常識的に考えれば上にいくほど伸びシロも小さくなる。ここから短期間での上積みは難しいかと思いきや、中村澄子先生は「いえ、全然。プラス100点くらいは簡単です」と心強い。目標は“860点”超え。企業が社員に要求しているスコアも、これでたいていはクリアする。
「私の教室には、国際部門で働きたい、海外で活躍したいというモチベーションを持って学びにくる人が多いのですが、審査基準は英語だけではないはずです。なのでTOEICのハードルはさっさと達成して、次のステップへ進んでほしい」
とにかく最短距離を行くこと。テストに出ない会話やライティングはとりあえず後回しにして、TOEICのスコアアップに集中する。まずは自分の弱点を分析し、リスニング/リーディングの“伸ばしやすいほう”から手を付けよう。
「多くの人はリスニング対策を優先したほうがいいでしょう。配点はリスニングもリーディングも同じ495点満点ですが、最後に標準偏差で調整されます。日本人は受験勉強の名残でリーディングはそこそこできる人が多く団子状態ですが、リスニングはかなりのバラつきがあって抜け出やすいからです」
標準偏差で得点調整される仕組みは、少々わかりにくい。例えばリスニングなら4~5問を間違えても満点(495点)が出ることがある。受験者でできる/できないの差があり、できる側に入ったときの効果が大きく出るからだ。逆に、リーディングで4~5問も間違えると、350~460点にしかならない。
「そこでノウハウになるわけですが、ポイントはTOEICならではの問題形式に慣れ、解き方を身に付けること。リスニングならパート3・4の攻略がカギになります」
リスニング・セクションは、会場に流される音声とともに進行する。ここで重要なのは、設問を読み、音声を聴き、選択肢を読み、正解にマークするという作業を、一定のリズムでこなしていくこと。そこでポイントとなるのが、設問文と選択肢の“先読み”だ。
「最初に、出題形式を解説する“ディレクション”が放送されます。出題形式はあらかじめわかっているので、この間に最初の一題の設問文と選択肢を読んでしまいます。こうすることで、何が問われるのかを知ったうえで問題文を聴くことができるのです。設問が読み上げられるときには、次の設問と選択肢の先読みに進みます」