マスクを使って効率アップ

TOEICの400点台は、高校卒業→大学入学のレベルに相当する。社会人になって久しく英語と関わりなく過ごしてきた人が、ぶっつけ本番でテストを受けたらこのレベルだったというケースが多い。

「400点台前半なら、中学英語の基礎に穴があると考えるべき。後半なら自己流で乗り切ったか、大学受験時に勉強した基礎を忘れているだけかもしれない。後者なら1カ月も勉強すれば、一気に600点台が狙えます」

いずれにせよ、中学2・3年の文法から始めるのがいいとのこと。テキストの使い方は、「TOEIC300点台の人も激変『中学英語の暗唱』」で説明した通り。問題を解いて文を完成させ→解説を読んで納得し→声に出して読み→場面をイメージしながら暗唱し→テキストを繰り返し読んで体に染み込ませる。

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森沢式「音読パッケージ」のやり方

「このレベルでは、もう少し長い文章を読みこなす訓練にも力を入れましょう。これは私が“音読パッケージ”と呼んでいる方法で、TOEICの長文読解とリスニング対策が同時にできます。文法テキストで取り戻した基礎を、使えるスキルにする駆動系のトレーニングです」

やり方はこうだ。まずは準備段階として、CDなど音源の付いた教材を用意して、精読する。構文や単語でわからないものがあれば、発音も含めてきちんと調べておく。

次に音源で節ごとにポーズ(一時停止)をとって復唱する「リピーティング」を5回。読み方やリズムを覚えたら、音源を使わずに音読を15回。再び音源を使い、今度はテキストを読まないリピーティングを5回。仕上げに音源を止めずに、少し遅れて復唱していく「シャドーイング」を5回やって、1セクションを終了する。

「1つの文章を30回読むことになります。テキストの最後までいったら、2周目。今度は準備段階は省いて、テキストを読みながらのリピーティングから。3周、4周……と回を重ねるごとにリピーティングは減らしていっていいでしょう」

同じ素材を何度も何度も繰り返していると、新しいものを読みたくなるが、そこは我慢。地道なトレーニングを繰り返していると徐々に精度の高いリスニングができるようになり、あるところでテキストを見ずともリピーティングできる瞬間がくるという。

「単語の学習については、頻出単語の4000~5000語は、文法や音読パッケージの準備作業で覚えてしまいます。英字新聞を読むには約1万語が必要ですから、不足するのは事実ですが、300~400点台から頻出単語集などに取り組むのは、やや背伸びのしすぎ。勉強時間が限られているのなら、まずは精読を優先すべきでしょう」

精読はともかく音読パッケージは忙しいビジネスマンにとって、時間的にも場所的にもハードルの高いトレーニングとなるが、

「やるだけの価値はあります。通勤電車の中ではヘッドフォンで聴きながら囁く、いえ口を動かすだけでもいいですから続けてください。マスクで口元を隠せばバレません。私など気が付いたらブツブツ声に出していて、周囲の乗客がサーッと離れて行ったなんてことがありました」

あまり集中しすぎると“ちょっと変な人”に見られてしまう可能性はあるが、それで質の高い英語力が得られるなら安いもの!?