介護離職したくないなら、介護の質に目をつぶれ

しかし、問題も多い。

デイサービスを行なう施設ですからちゃんとした宿泊設備はありません。施設のフロアに布団を敷いて寝せる、というところも多いそうです。施設によっては男女の区別もなく個々の仕切りもされていない、つまり雑魚寝状態のところもあるということです。

経費の関係で対応する職員は限られており事故が起きるケースも少なくありません。お泊りデイサービスは介護保険適用外のサービスのため、介護の質を保つ規制がなく、劣悪な環境でも放置されてきました。

「ただ、仕事を持つ介護者にとっては自分が不在になる時も要介護者を託せる、ありがたいサービス。また、現状ではなかなか入居が実現できない特別養護老人ホーム替わりに使える場所にも映ります。あくまで緊急避難的なサービスにもかかわらず、長期的に宿泊をさせる人も少なくありません。厄介な存在をあたかも物のように預ける場所になっている現実があるわけです」

厚労省はこうした状況を改善するため、この4月、運営のガイドラインを定めました。宿泊の提供は緊急か短期的な利用に限る、宿泊定員は9人以下、相部屋は4人以下といったものです。これに従わなかったとしても罰則はありませんが、一定の基準ができたことで、問題の多い事業者は淘汰されていくだろうとFさんはいいます。

「“こんなひどい扱いを受けているのか”と利用者さんが気の毒になるようなところもありますからね。ただ、お泊りデイサービスを利用することによって離職せずに済む面もあって、なくなると困る方も多いんです」

介護離職を減らそうとすれば介護の質には目をつぶらなければならず、介護の質を求めれば離職を選ばざるを得ないという矛盾があるのです。

「それを考えると、やはり介護職の待遇を良くし、多くの人材を確保できるようにする、という話に戻ってしまうことになる。さりとて福祉財政が厳しい国は、そこには触れようとしません」

希望のない話になってしまいましたが、これが介護の現実のようです。

関連記事
「仕事・育児を両立」した女性に限って、なぜ、50歳で介護離職するのか?
団塊世代が引き起こす「2017年問題」介護離職を減らす法
企業と政府、「働き方」改革にこれだけの隔たり
親の介護「早く死んで」と願う私は冷血か
誰が、介護世帯を世の中から「隔離」するのか?