規律なくして栄光なし

規律なきチームに栄光は、ない。帝京大の強さとて、練習や私生活の規律と無関係ではあるまい。明大ラグビー部をつくった故・北島忠治監督の話で好きなエピソードがある。ある日の練習試合、ストッキングを下ろしていた学生を呼んで、ちゃんとひざのところまで引き上げろと叱った。

その時、北島先生はこう、言ったという。「服装は我のためにあらず、相手に対する礼儀なり」と。いいなあ、このセリフ。

では、ことしの明大はどうなのだろう。“北島イズム”が背骨を貫く丹羽監督が就任して3年目。学生寮に住み込み、時間を守る大切さや、自己管理、規則正しい生活を粘り強く指導している。

昨季までは、門限や「食事中は携帯禁止」などの規則を破ると、丸坊主になるなどの罰を科していたが、ことしはあえて罰則をなくした。「自律」を促すためである。

中村駿太主将が説明する。「規則を守らせるのではなく、自ら守るのです」

中村主将はまじめである。明大ラガーらしく、明るく、おおらかでもある。「禁酒ですか?」と聞けば、真顔でこう、言った。

「はい。20歳以下は飲んでいません」

中村主将の父も明大ラグビー部のいいフッカーだった。家の居間には、故・北島先生直筆の『前へ』と書かれた色紙が飾ってある。この親にして、この子ありか。メイジ魂は筋金入りなのである。