「ずいぶんイメージが違うが、それでいいのか」
それはクルマが完成し、豊田章男社長に見せた時のことだ。豊田社長はすぐに「最初のデザインとずいぶんイメージが違うが、それでいいのか」と突き返してきたそうだ。そこで、福市プレジデントをはじめとしたRXの担当者らは2カ月の猶予をもらってつくり直した。
「失敗するにしても、攻めて失敗したほうがいい。守りに入って失敗したら何が残るのか。どこが良かったのか、悪かったのかもわからない。やりきらなかったら、また同じことをやらないといけなくなる」と福市プレジデントはその時の想いを語る。
同時に今のレクサスに必要なのは「成功よりも成長」と、担当するメンバーを育てることに主眼を置いて、つくり直しに取り組んだという。
そして完成したのが、今回披露したRXだったわけだ。「人生にはオンとオフがあり、オンは理性、そしてオフは感動や感情ではないでしょうか。新しいRXはオンとオフを両立したクルマです」と福市プレジデントは満足そうに話す。
レクサスの国内販売は決していいとは言えない。2011年と12年にメルセデスベンツやBMWを上回ったものの、13年にはメルセデスに、14年にはBMWにも抜かれ、高級車ブランドで3位に甘んじているのだ。
なんとかして今回のRXで巻き返そうというわけだが、その差は言うまでもなくブランド力で、なかなかすぐに埋められるものではないだろう。同じ価格なら、メルセデスやBMWを買いたいという人が多いからだ。
「レクサスならではのオリジナリティをちゃんとつくっていき、ドイツ人にレクサスを買ってもらう。それができないと、高級車市場で生き残れないと思う」と福市プレジデントは強調する。そのためにはまだまだやることが多く、レクサスのブランド構築へ向け、これからも模索が続きそうだ。