全面協力してくれれば普天間の閉鎖は早くなる
【塩田】1カ月間の集中協議で合意に持っていくつもりだったんですか。
【菅】約束してくれればよかったですよ。
【塩田】合意の見通しが立っていたわけではなかったのですね。
【菅】ない。ただ、集中協議を経て本音でしゃべれるようになりましたね。
【塩田】ここまで首相官邸と知事の対立ばかりが目立っています。
【菅】最初、ぎくしゃくしていましたね。政府も、甘かったとか、いろいろ言われましたけど、翁長知事も尻が重かったと思いますよ。会いたいと言ってきたのが前々日だったり、決算委員会のときとか。ま、パイプもなかったのでしょう。ですが、今はこちらもいろいろと言いたいことを言うという感じになっています。
【塩田】今後の見通しは。
【菅】翁長知事は埋め立て承認を取り消しましたが、承認手続に瑕疵はなく、行政の判断は下りています。
【塩田】防衛省防衛局長は、承認取り消しの審査請求と執行停止を国土交通相に申し立てました。今後、裁判に持ち込まれて法廷での争いになる可能性もあります。そうなれば、解決までさらに長時間を要することになりませんか。
【菅】普天間飛行場の固定化だけは、絶対に避けなければなりません。沖縄県が全面協力してくれれば、普天間の閉鎖は早くなる。そこですよ、ポイントは。
【塩田】仮に裁判となった後、国側が勝訴しても、反対派の人たちが工事を阻止しようとして現地で反対行動を取った場合、政府が実力で排除して工事を進めるのは難しいのではないかと思われます。つまり裁判で勝っても、政治的には敗北で終わる可能性もあるのでは。
【菅】我が国は法治国家であり、すでになされた行政判断に基づいて工事を進めることは、当然ではないでしょうか。それよりも、日米同盟の抑止力や普天間飛行場の危険除去を考えたとき、ほかに解決方法はなかなかないですね。
【塩田】普天間飛行場移設問題は1996年、当時の橋本龍太郎首相とアメリカのウォルター・モンデール駐日大使の合意からスタートしましたが、以後の歴代政権の対応を受け継いで現在に至っています。
【菅】たくさんの方が努力され、進んだり後戻りしたりしながらやってきたわけですが、私たち自民党が圧倒的に長く政権を担ってきたのですから、そういうものを背負いながらも、沖縄の負担軽減はしっかりやっていかないと駄目だという強い思いで進めています。たとえば、橋本内閣の梶山静六官房長官もいろいろと努力されましたが、役職の期限が短かったですね。私は、辺野古移設の工事は、住民の生活環境、自然環境にできる限り配慮して進めていくしかないと思っています。
【塩田】とはいえ、知事選で「辺野古阻止」を掲げた翁長さんが全得票の5割以上の支持を得て当選したという事実があります。政府としてはその点をどう受け止めていますか。
【菅】すでに仲井眞前知事から埋め立て承認をいただいており、行政判断は示されている。それを、「阻止」と言って、それだけで止めていいかどうかですね。沖縄にはいろいろな声があることも事実です。選挙は一つの結果だと思いますけど、それがすべてではない。やはり日本は法治国家ですから。
【塩田】沖縄県との話し合いを踏まえて、政府が目指してきた方向を多少修正し、たとえばアメリカとの再交渉も視野に入れて、新しい道を探るといった考えはありませんか。
【菅】今までそれやってきて、結局、全部戻っているわけです。特に民主党政権では、時の首相が沖縄の人に「最低でも県外」と言った。それが結果的に「学べば学ぶほど抑止力が大切だ」ということになり、結局、沖縄県民も含めた日本全体の抑止力という点で戻ってきた。非常に難しい問題で、ここまでさまざまな歴史がありますが、辺野古に移設し、普天間飛行場を返してもらうのが現実的な解決策だとつくづく思います。