ズレた若者を、あえて採用する

市川博久(いちかわ・ひろひさ)●アクセンチュアオペレーションズ本部マネジング・ディレクター。1974年生まれ。97年大学卒業後、アクセンチュアに入社。コンサルタントとして大手企業の基幹系システム導入に携わる。2007年、インフラストラクチャー・アウトソーシング部門を立ち上げ、事業統括を務める。10年より同社の企業市民活動における「若者の就業力・起業力強化」チームの責任者を兼務している。
アクセンチュア
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【市川】若者が集まっただけでなく、ベンチャー企業の経営者や大企業の採用担当の方々もたくさん参加されて、採用実績もたくさん出ました。僕が担当する企業市民活動の取り組みでは、実は若新さんたちとご一緒させていただいている活動はもっとも成果を上げている活動のひとつです。ただし、若新さんもおっしゃったように、ニッチな層の若者に向けたサービスのためメッセージや表現が過激で、活動をサポートするにあたり社内での説明には気を遣いました。明確な成果が出て、誰も否定しえない状況になった今では、社内でも大きな声で言ってますが(笑)。

【若新】御社には、活動をサポートするだけではなく、就活アウトロー採用とナルシスト採用で合わせて5人もの若者を、実際に採用してもらうことができました。そうなったらいいなとは思ってたんですが(笑)、本当に採用してもらえて、すごく感謝しています。

【市川】本当にいいサービスだと思ったのなら、自分たちの会社でも採用しないと口だけの嘘になるじゃないですか。実際、採用した若者は、海外の一流大学を卒業した人や、居酒屋でずっとホールを担当していた人などバラエティに富んでいて、そして、みんなすごくいい仕事をしています。

ナルシスト採用からきた留学経験のある女性のAさんは、自分の上司にも遠慮なくツッコミを入れるんです。社内の外国人幹部へのプレゼンを前に緊張している上司に向かって、“Are you OK?”と平気で言ってのけますから(笑)。そんな風に上司を突き上げることができる部下は、彼女くらいでしょうね。チームとは何かを改めて考えさせられます。とてもいい味を出してくれていますね。

【若新】就活アウトロー採用やナルシスト採用で集まる若者は、確かに学歴が高めですが、彼らの魅力は他の若者よりも成績が良いか悪いかということではなく、どれだけ横に幅があるかということだと思います。つまり、どれだけ堂々とズレているか。小規模なベンチャー企業に紹介する場合は、そのズレ具合がちょうどいい会社とマッチングできます。

でも、社員の“平均値”がはっきりと存在するような大企業の場合はそうもいきません。にも関わらず、市川さんは、世間一般の大企業基準に合う若者を採用するのではなく、あえて基準からズレた若者を採用することで、職場がどう変化するかを試してみたい、とおっしゃってくださいました。

【市川】採用した人たちは、みんないいキャラしていますね。映像制作などのクリエイティブな仕事を任せると、これまでの社員からは考えられなかったようなものが出来上がってきて、毎回おもしろいです。

【若新】一番嬉しかったのは、あえて組織からズレている人を採用するにあたって、だからこそ大切な“共感をつくる”ということを徹底してくれたことです。採用基準として、一般的に企業が候補者に課すような総合適性検査結果はどうしても会社的に必要ということでしたが、あとは「この人と働きたい」と思えるかどうかだけを考えてくれて、市川さんの部下は応募者と何度も食事にいって、お互いの気持ちを確かめる時間をつくってくれました。