離婚を決意したら生命保険の受取人を変更

問題は遺産だけではありません

三宅さんは生命保険に加入していました。生命保険の受取人は、通常は配偶者である妻。そうなると、三宅さんの生命保険金も妻が全額受給することになります。

さらには、職場から死亡退職金が支払われることになったのですが、規程上、その受取人も妻でした。そうなると、退職金も妻が全額受給することになります。

この生命保険金や退職金は、相続手続においては、原則として遺産に含まれません。

どういうことかというと、全額を「妻だけ」が受け取ることになり、三宅さんの両親が妻に対して、生命保険金や退職金の3分の1を相続したいと主張することができないのです。

離婚が成立すれば妻は1円も相続できなかったのに、いくら離婚成立前だったからといって、このように財産の大部分を妻が取得できてしまうというのは理不尽だ、考えの方も多いかもしれませんが、これが現実なのです。

だからこそ、「離活」が必要になるのです。

まずできることは、生命保険金の受取人を変更すること。離婚を決意したら、まずは生命保険の受取人を、配偶者から親や子どもに変更しましょう。そうすれば、万が一、離婚協議中に死亡してしまった場合でも、生命保険金が配偶者に支給されるということはなくなります。

次にやるべきことは、遺言を作成することです。

配偶者には「遺留分」という最低限相続する権利が認められます。遺言で「配偶者には1円も相続させない」と書いたとしても、もし配偶者が遺留分を主張したら、相手が相続できる金額は0にはなりません。

ただ、遺留分は原則として相続分の半分ですので、本ケースの場合、三宅さんが、遺言を書いておけば、妻が相続できる財産を3分の1まで減らすことができます。

退職金については、勤務先の規程なのでどうしようもないことが多いですが、事前に会社と掛け合ってみてもよいかもしれません。

このように、しっかりとした準備さえしておけば、万が一のことがあっても、離婚協議中の配偶者に相続させる財産を少なくすることはできます。

人は、いつ死ぬか分かりません。

離婚協議中に死んでしまってから後悔するくらいなら、離婚を決意した時点で「終活」をすることをオススメいたします。

※説明した内容は、分かりやすくするために話を単純化しています

武内優宏(たけうち・ゆうこう)●弁護士。1980年、東京都生まれ。2007年弁護士登録後、2011年に法律事務所アルシエン開設。遺言・相続に関する案件や葬儀社の法律顧問業務など、「終活」に関わる法的問題を多く扱う。オフィシャルサイト http://www.alcien.jp/
関連記事
遺族が喜ぶ「エンディングノート」の使い方とは?
相続で大もめ! 原因は「エンディングノート」って本当?
<遺産相続>勝負は10カ月! ドキュメント家族会議
「遠距離介護と骨肉の遺産相続」解決法
「遺言、エンディングノート」のススメ