ボタン1つでも、家族は安心
同居については、4年ほど前に母が転んで腰を痛めたときにも話が出ました。何しろ、腰が痛くて、家の中を這って歩いているような状態でしたから。その後、デイサービスのリハビリに通って、だいぶん良くなりましたが、その時に様子を見に来た、地域包括支援センターの人が、電話機にセットする「緊急通報装置ボタン」を設置する手続きをしてくれました。緊急の場合にボタンを押せば、自動的に最寄りの消防本部に連絡がいくようになっています。
すぐに押せるように、こたつの上に置いてあって、間違って何度か押してしまったみたいです。すると「何かありましたか?」って安否確認の電話があって(苦笑)。もちろん万全ではありませんが、ボタン1つでも、本人や家族は安心します。
たしかに、老親のひとり暮らしは、年齢的にも不安は残ります。でも地元には母の友人がたくさんいますし、近所の民生委員の方も、ひんぱんに様子を見に来てくださるようです。前述の事件の後は警察でも、実家をパトロール強化地域として巡回するようになりました。離れて暮らしていても、このように、母の住む地域とのネットワークを密にしていけば、なんとかサポートできるのではないかと考えています。
身体が不自由になったときのことは、母も覚悟をしているらしく、昨年末に帰省した際に、現在通っているデイサービスに隣接するサービス付き高齢者住宅を見学してきました。もし将来的に何かあれば、ここに入ると母は決めているようです。
職員の方にも色々とお話を伺いましたが、アットホームな雰囲気で、今年オープンしたばかりの施設は温泉旅館のようで介護施設には見えません。職員の体制も充実しているようです。何より母がそれを望んでいるということがよくわかりました。
あと5年ほどで私も定年退職を迎えます。母が元気でいてくれれば、地元に戻りたいという気持ちもあります。まだ先のことはわかりませんが、いつまでも母が楽しく自由に過ごしていてくれることが何よりだと考えています。
◆お金のプロからアドバイス
親と離れて住んでいる場合、このようなトラブルに巻き込まれるケースが最も心配だ。振り込め詐欺の被害防止策として、電話での会話を録音する装置を、高齢者宅に無料で貸し出すサービスを行う地域もある。高齢期の親を守るセーフティーネットはいくつあっても多過ぎるということはない。
※本連載は書籍『50代からのお金のはなし』(黒田尚子文著)からの抜粋です。