「カリスマ型」を10年続けるのは難しい
実際に山に登り始めた後は、メンバーをがんばらせて動かすのもリーダーの仕事。リーダーと聞くと、一般的には「自ら先頭に立って人を導く人」といったイメージがあります。自らの思いと実現したいビジョンを情熱的に語り、「エベレストを目指すぞ! 俺についてこい!」と先頭に立って旗を振るような、熱意とやる気に満ちたリーダーは、多くの人が思い浮かべる理想的なリーダーのイメージです。こうしたリーダーシップスタイルを「カリスマ型リーダーシップ」といいます。
しかし、そうした熱量の高いリーダーがグイグイ引っ張るリーダーシップは、一過性のイベントやベンチャーの立ち上げ時など、勢いの必要なときにはよくても、10年、20年と続けていくにはしんどいかもしれません。
また、リーダーの熱量だけが高く、フォロワーとなるチームメンバーがついていけない状況では「グイグイ」引っ張っていたつもりのリーダーが「登らないと、ただじゃおかないぞ」と「オラオラ」系(!?)になってしまい、目標達成ができないだけでなく、ブラックな状況が生まれる危険性もあります。
「リーダーシップとは山登り」をすることだとすれば、「グイグイ」引っ張るだけがリーダーシップというわけでもありません。最終的に山登りという目的を達成できるならば、どんなやり方でもいいわけで、リーダーシップにも様々なスタイルがあります。
ビジョンを示して導くリーダーシップ、自ら模範を示すリーダーシップ、みんなの意見を聞き調整するリーダーシップ、近年はメンバーを励まし支援するようなスタイルの「サーバントリーダーシップ」もよく知られています。
様々なスタイルが登場していて、自分はどのリーダーシップスタイルを採るべきか、と迷う人もいるかもしれません。しかし、同じ山登りでも、登る山と登るメンバー、そして当日の天候などによって、採るべきリーダーシップスタイルは変わります。初心者が多ければ、励ますスタイルが適しているかもしれないし、悪天候に見舞われたら、とっさに引き返す判断をする際は独断的なスタイルが必要なときもあるでしょう。リーダー自身のキャラクターもあります。そう考えると「リーダーシップスタイルは状況にあわせて無数にある」といってもいいかもしれません。ちなみに、学問の世界では、そのことを「コンティンジェンシー理論(状況依存性)」といいます。