「360度評価」はリーダーの資質を改善するために有効

リーダーシップスタイルは無数にあるとすると、いったいリーダーシップというものを研修で学ぶことができるのでしょうか。一般的に行われている階層別のリーダー研修では、課題設定、計画立案のやり方を学ぶほか、ネットワーク構築、つまりチームメンバーを動かすためのコーチングやコミュニケーションの研修が中心に行われています。リーダーシップを発揮するときに、「オラオラ」系に陥らず、どのようにチームメンバーとコミュニケーションを取って勇気づけたり、メンバー同士助け合う関係をつくるか、といったところに主眼が置かれているのです。

こうした研修は、山登りをする前に、「山登りの基礎知識」と「山でのコミュニケーション術」を身につけるという意味ではとても効果的ですが、やはり山登りを学ぶためには実際に山登りをして、振り返って学ぶ機会が最も重要です。

そこで最近では、実践型の研修を行い、実際に課題に取り組み、振り返ることでリーダーシップを開発するというアプローチが採られています。

そのアプローチの方法としては、リーダー個人の資質を改善する「個人の開発」と、実際に仕事をするチーム内に「リーダーシップ現象」が生まれるよう促進する「チームの開発」の2つが存在します。

「個人の開発」とは、リーダー個人が自分の仕事や職場を振り返りながら、自分の強み、弱みや課題などに気づき、リーダーとしての資質を獲得していく、というアプローチです。よく行われているのは、対象者を上司、部下、同僚、顧客などの関係者が多面的に評価する「360度評価」です。「360度評価」は人事考課における評価となっている場合もありますが、こうした他者からのスパイシーなフィードバックの機会を通じて、リーダーとして己を振り返ることが求められます。

それに対して「チームの開発」は、「リーダー個人」に焦点化するのではなく「リーダーシップ現象を生み出したいチーム全員」を対象にして行われます。こちらのアプローチでは、チームで与えられた課題に取り組み、その後、チームで何が起こったのかを振り返り、役割分担や意思決定が適切であったかを考えていくことが行われます。多くの企業、組織で行われている「チームビルディング研修」などは、これにあたります。考えてみれば、各メンバーがチームに貢献することで、「山登り」ができさえすれば、リーダーがいてもいなくてもよいわけです。チームで成果を出す「リーダーシップ現象」を生むための働き方を学ぶのが「チームの開発」のアプローチです。