100人くらいの塊でないと自民党には勝てない

【塩田】これからの維新は、民主党も含めた野党再編の道を歩むことになりますか。

【片山】今の「一強多弱」ではダメですよ。緊張感がなくなる。場合によっては政権交代ができるということになれば、国民の選択肢が増えるし、政党同士が切磋琢磨することになります。今、野党同士、あまり仲がよくない。正直言ってそれぞれ器量の問題がありますけれども、そこをうまくまとめなければ……。

【塩田】「一強多弱」を打破するために、今後、政治家はどう動くべきですか。

【片山】野党がまとまらなければ。自民党は対応に弾力性があり、中で侃々諤々の議論をやるけれども、決まったらみんながそれに従う、我慢するという文化がありますが、民主党にはそれがない。維新は多数決で決めることにしているのでそれはあるけど、いつまで守れるか。

 野党側がまとまらないと、小選挙区では勝てません。松野代表が唱えているのは選挙対策です。 100人くらいの塊にならないと、衆議院の小選挙区や参議院の府県選挙区では自民党に勝てない。その塊をどうやってつくっていくか。自民党は野党を分断したい、分割して統治せよというのが大方針です。植民地経営みたいなことを考えて、今、維新が標的にされているんです。

【塩田】維新と民主党は、路線の違いや労働組合との関係など、高い壁があります。

【片山】橋下さんや松井さんは労働組合と戦っていますから、それはあります。簡単に言うと、自治労や日教組ですよ。そこが難しいところで、労使をどうやって越えるかですね。

私は旧自治省(現総務省)出身で、官公労相手に公務員関係の仕事もやってきたから、彼らのいいところと悪いところがわかりますが、既得権に浸かっているという観点では、やはり一種の既得権益者ですね。それをどこまで壊せるか。

【塩田】自民党に対抗する大きな塊を生み出すために、片山さん自身はどういう役割を。

【片山】野党再編といっても、上からでは無理で、まず実績を積み上げる。政策連携からやるのがいい。私は政調会長のとき、野党の政調会長会議で議員立法の共同提案とか閣法(内閣提出の法案)の共同修正など、実績を上げていきました。ですが、各党みんな思惑があるから、なかなかまとまらない。それから、人間的な信頼関係がないとうまくいきません。あの人が言うなら信用しようというところが少ないから、すぐにひっくり返ります。徳がなければ。

片山虎之助(かたやま・とらのすけ)
参議院議員・維新の党総務会長兼参議院議員会長
1935年8月、岡山県笠岡市生まれ(現在、79歳)。岡山県立岡山朝日高校、東京大学法学部卒。58年に自治庁(現総務省)に入庁。静岡県総務部長、岡山県副知事、自治省大臣官房審議官などを経て消防庁次長で退官。89年の参院選に岡山県選挙区から出馬し、初当選。以後、当選4回(現在は比例区)。自治相兼郵政相兼総務庁長官、総務相を務めた後、参議院自民党幹事長となるが、2007年の参院選で落選。10年に自民党を離党して「たちあがれ日本」に入党し、参院選で返り咲く。太陽の党の結成を経て日本維新の会に合流。分党後も維新の党に参加し、重鎮として存在感を示している。日本消防協会会長も務めた。著書は『共存共栄の思想』『私の地域創造論』など。名前の虎之助について、「子供の頃は、呼ばれるとみんな笑うから嫌だったが、選挙のときは覚えてもらえる」と笑いながら語る。
(尾崎三朗=撮影)
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