矢継ぎ早に打ち出した新機軸

盤石な営業基盤を抱える国内事業については、複数の保険会社の商品を扱う乗り合い代理店中堅のライフサロン(東京・千代田)を5月下旬に買収し、傘下に収めた。日生は営業担当者が顧客を直接、訪問する伝統的なスタイルが継続して顧客との関係を築いていくうえで最適な営業手法とし、今後も営業手法の中核に位置付ける。しかし、最近は複数の商品を比較して選びたいニーズの高まりから、乗り合い代理店の市場が急速に拡大しており、日生としても無視できない存在になっていた。子会社としたライフサロンは、現在の50店舗を10年後に300店舗に拡大し、日生がこれまで取り込められなかった層へのアプローチを進める。

また、6月にはシステム大手の野村総合研究所への出資比率を3%程度に引き上げ、資本・業務提携した。両社の協力関係を強化し、ビッグデータを活用した新たな保険ビジネスモデルの構築などに乗り出す。こうした矢継ぎ早に打ち出した新機軸は、さながら尻に火が付いたガリバーがなり振り構わず首位奪還を目指す豹変ぶりに映る。

さらに、これまで慎重だった海外事業展開についても、積極的なM&A(企業の合併・買収)を検討する方針に転換した。6月はじめには、豪大手銀行のナショナル・オーストラリア銀行傘下の保険事業の買収交渉が伝えられた。買収額は2000億~3000億円規模に上るとみられ、実現すれば日生の海外M&Aで最大規模となり、日生の攻めの経営への変身を印象付けられる。

一方、第一生命は10年に株式会社の経営形態に転換し、上場を果たして以降、米中堅生保プロテクティブ生命の買収を今年完了するなど、株主を意識した成長戦略を展開し、日生との差を縮めてきた。さらに海外M&Aを通じ、20年までに利益水準などで世界トップ5入りを目指すと鼻息も荒い。その意味で、引き続き相互会社の形態を維持する日生は、成長戦略で後手に回っているとの印象は拭えない。攻めの経営への転換で、盤石な国内トップに復権できるか。この3年が正念場となる。

(宇佐美利明=撮影)
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