──東日本大震災の爪痕がまだ生々しく残る中での協会長就任となりましたが、生保業界として、今回の震災にどのように対応されているのでしょうか。
<strong>生命保険協会会長 筒井義信</strong>●1954年、兵庫県生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒。77年日本生命保険入社。長岡支社長、企画広報部長などを経て、2010年代表取締役専務執行役員、11年4月に社長就任。7月に生命保険協会の協会長に就任。
生命保険協会会長 筒井義信●1954年、兵庫県生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒。77年日本生命保険入社。長岡支社長、企画広報部長などを経て、2010年代表取締役専務執行役員、11年4月に社長就任。7月に生命保険協会の協会長に就任。

被災地には、約294万人のご契約者がいらっしゃいます。営業職員の訪問や電話、メールでのご連絡など、各社がありとあらゆるアプローチをしておりますが、安否確認ができているのは、7月末の時点で97.4%。ご連絡が取れていないお客様は2.5%で、人数にすると7万4000人。おそらくその中には、被災地から避難されて所在が把握できないという方が多数おられるのではないかと推測しています。

安否確認が終わった方々については、必要な手続きをさせていただいております。お支払金額は、8月4日時点で1108億円。全体では2000億円規模になると想定されていますので、ようやく半分過ぎたところでしょうか。

生命保険という商品にはデリケートな部分があります。行方不明者については行政のほうで死亡認定手続きの簡略化の対応をしていただいていますが、お気持ちの整理がつかないご契約者もおられます。どこかで見つかるのではないかと考え、まだ手続きはしたくないという方もいらっしゃるのです。私どもとしてはお手続きの迅速性を重視しつつ、こうしたお気持ちを大事にして対応していかなくてはなりません。

いずれにしても、ご契約者に保険金や給付金を確実にお支払いすることが我々の使命です。たとえば受取人がお亡くなりの場合は法定相続人にお支払いするのですが、役所に行って法定相続人を確認するということもやっています。「待ち」ではなく、お客様と連絡が取れるよう能動的にあらゆる手段を尽くし、確実にお支払いをする。その姿勢が大変重要だと考えております。

──震災で日本経済は大きなダメージを受けました。これから復興を目指す中で、生保業界が果たすべき役割についてどのようにお考えですか。

いま求められているのは、安心できる生活保障システムの構築です。社会の活力は、「安心」がベースにあってはじめて生み出されるものです。震災後、企業の自律的な回復には目を見張るものがありますが、私どもとしても、企業や個人のお客様に安心を提供するという生命保険事業の本来の使命を果たすことで貢献していくつもりです。

安心の提供というのは、震災後に限った話ではありません。これまで生活の安心は、公的な社会保障制度が多くの部分を支えてきました。ただ、日本の財政状況は厳しく、それを受けて社会保障制度改革の議論が進んでいます。こうした流れの中で、民間の生保業界に求められる役割はますます大きくなっていくはずです。公的な制度を補完しながら、全体として安心できる生活保障システムをどのようにつくり上げていくか。それが私どもに課せられた役割だと思っています。