生き残りをかけた実験
【牧野】鯖江市が提案するこれからの地方創生計画にも、彼女たちの「感覚」を取り入れています。一つは「市民協働によるまち美化の推進」ですが、これはJK課が企画したゴミ拾いイベント「ピカピカプラン」にヒントを得ています。まちをきれいにするにしても、嫌々掃除するのではなく、コスプレなどをして楽しく掃除しようというのが彼女たちの発想。そして、「きれいなまちだと嬉しい」と言います。まちの掃除を、市民の役割や責任といって押し付けるのではなく、楽しみながら美化もできるという仕組みにすれば、ほかの自治体とは差別化できるはずです。
【若新】他とは違う自治体モデルをつくるために、鯖江市は若者の感覚を取り入れながら、いろいろと実験していこうというわけですね。
【牧野】実のところ、実験的な事業を予算化するのは容易ではありません。そこでJK課の今後の活動資金については、市でクラウドファンディングを実施し、様々な方から約75万円のご支援をただきました。自治体がオーナーとなり、地元銀行がサポートするクラウドファンディングの試みは鯖江市だけではないかと思います。
【若新】自治体がオーナーになるのは日本初だったようですね! JK課プロジェクトは事前に詳細な計画を立てず、当事者たちと一緒に色々と模索しながら「変化を起こす」ことを目指しましたが、それを議会で説明して予算化するのは、確かに難しそうです。JK課を応援してくれる人たちからクラウドファンディングで直接集めた資金なら、税金ではないので、実験的な活動にも使えます。
さらにクラウドファンディングの素晴らしいところは、鯖江市以外の人にも応援してもらえること。そして、特定の事業をサポートできることです。税金の場合は、基本的には市民が使い道を指定することができませんし、地域にあまねく、そして確実に役立つと分かるものにしか使えませんでしたから、そこが大きな違いですね。
【牧野】行政の活動には、色々な制限や制約があります。しかしそうだとしても、色々と工夫しながら挑戦し、従来の常識や価値観を破っていかなければ地方自治体は生き残れません。常識や価値観を覆すのは若新さんの真骨頂なので、これからも期待しています。