効果が高い「手土産」とは

政府の方針が変わっても、“袖の下文化”が簡単に変わらないとしたら、日本企業はどうすればいいのか。

「中国人はメンツを大事にするので、要求を真正面から断らないほうがいい。たとえば、怪しいコンサル会社を紹介されたら『本社を通す必要がある』、普段と別の口座に振り込むように要求されたら『経理システム上無理』など、口実を用意するべきです」(同)

潔癖であろうとするあまり、当局との付き合いを避けるのも問題だ。逆に目をつけられ、思わぬ不利益を被ることがある。法的リスクを最小限にしつつ、当局と良好な関係を保つ方法として、伊藤弁護士は「中国の伝統行事を利用すること」「中国人の好みを調べること」の2点をあげる。

「中国では通常祝われる中秋節に月餅を贈るなど、季節の行事に則った行為であれば、贈収賄とみなされるリスクは比較的低いでしょう。物を贈る場合、高価なほど危険です。せいぜい数千円程度にとどめる。その範囲で喜ばれるには、相手の好みを十分調べて物を吟味するのが大事。今、中国で一般的に喜ばれるのは、日本の化粧品やお茶、お菓子の『白い恋人』などです」(同)

ちなみに、贈収賄には訴追基準(摘発される最低金額)が設けられ、個人が個人に贈賄した場合の訴追基準は1万元(約19万円)以上だが、

「例外規定があり、訴追基準以下でも刑事責任を追及される可能性はあります。また、行政罰には明確な訴追基準がない。少額なら絶対大丈夫とはいえません」(同)。

(答えていただいた人=中国弁護士 伊藤ひなた 図版作成=ライヴアート)
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