中国でビジネスをする日本企業が頭を悩ませるのが“賄賂”だ。中国では当局の許認可や当局との折衝が必要なことが多く、そこであからさまに賄賂を要求する役人も珍しくない。中国で公務員への贈賄は最高で無期懲役の重罪だ。また、中国では民間企業同士の“贈収賄”も罪になる。
これまで日本企業は郷に入っては郷に従えとばかり、袖の下文化に悪い意味で順応してきた面がある。ただ、摘発例はそれほど目立たなかった。
しかし、最近は流れが変わりつつある。2014年9月、英製薬大手のグラクソ・スミスクラインが贈賄罪で30億元(約582億円)の罰金刑、現地法人幹部5人に執行猶予付きで2~3年の懲役刑が言い渡された(収賄側は民間医師等)。また、12月には非鉄金属メーカーのフジクラの子会社が、民間人への贈賄で1200万元(約2億3280万円)の罰金を命じられている。このような変化について、中国弁護士の伊藤ひなた氏は、「習近平政権が贈収賄に厳しい姿勢を打ち出していることが背景にある」と指摘する。
賄賂は具体的にどのような場面で出てくるのだろうか。
「税関がよく問題になります。輸出入の手続きがストップし、賄賂なしでは物流が動かないことさえあります。また、当局担当者から怪しいコンサルティング会社を紹介されることも。担当者の親戚が経営している会社で、料金は相場の5倍だったりします。間接的な賄賂です」(伊藤弁護士)