GMSの売り場をのぞいてみよう。入ってまず目につくのが、寿司、天ぷら、鶏のから揚げなどを売るデリカワールド。ベトナムには屋台などで買って、その場で食べる「即食」という文化があり、これに応えたフードコート形式だ。これが予想以上の大ヒットとなった。オープンキッチンなので、調理のライブ感が漂ってくるとともに、鮮度もアピールできる仕組みだ。


(1)大ヒットした寿司コーナー。ベトナムオリジナルもあります。(2)鮮魚は淡水系の魚介類が多い。(3)パクチーをはじめ、さまざまな香菜が並ぶ。(4)インスタントラーメンは、ベトナムの国民食といっていいほどの人気。

日本食の代名詞でもある寿司は、生魚を食べる習慣のないベトナムではまだ一般的ではないが、ここに来れば一貫25~30円とベトナムでのランチの予算(100~200円)に合わせた価格設定なので手ごろ。しかも、初めて食べたけれどおいしいと大好評。寿司ダネとなる魚の調達先は、ベトナム、その他東南アジア、日本がそれぞれ3分の1。コメはベトナム産ジャポニカ米、合わせ酢はベトナム風にアレンジされている。

生鮮食品コーナーには、日本では見かけない鮮やかな色の野菜や果物、そして魚介類が並ぶ。

日本では魚市場や青果市場があり、仲買がいて、市場に行けば何でも揃うシステムが確立しているが、ベトナムには中央市場がない。11年にベトナムに赴任し、仕入れを担当した妹尾文郎ゼネラルマネジャーは、ひたすら産地を回り、使える取引先をそれこそ一戸ずつ門を叩いて回ったという。

ゼロからのスタートで、テナントの募集や取引先の開拓にも難題は続いた。

「イオンショッピングセンターがどれくらいの規模なのか理解されない、というより、そもそも誰もイオンを知りません。取引をお願いしたくても、まずアポが取れない。最初は本当に冷たい感じでした」と妹尾は振り返る。

1号店がオープンして、その大盛況ぶりを見て、手のひらを返したように、ぜひ契約したいという企業が殺到した。

「地元だけでなく、日本からも行政絡みで一緒にやりましょうという案件が急激に増えました。昨年は、何もかもが一気に変わった年です」(妹尾)

(文中敬称略)

(岩田亘平=写真)
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