なぜ法務職はジミなのに花形か
▼法務職というお仕事
企業の法務職も中・長期的に見て有望な職種だ。
法務部門の充実・拡大を図る企業が増えているからだ。商事法務研究会が5年ごとに実施している上場企業調査(「法務部門実態調査の調査結果」2010年)によると、法務専門部署を持つ会社は70.3%。前回(05年)に比べて7.9%も増えている。
部レベルの法務専門部署を持つ会社が42%、課レベルが28.3%となっている。また、法務担当者数も前回調査より10%増加し、日本の弁護士資格を持つ企業内弁護士も168人、前回の3.2倍に増加している。
かつての企業法務といえば、不祥事が発生した後の訴訟対応など顧問弁護士を通じた業務が主流であった。しかし、1990年代以降の証券不祥事などの事件を皮切りにコンプライアンスの強化など各事業部門が引き起こす事件を未然に防止する「予防法務」の重要性が高まった。
さらに2000年以降、会社法の改正による企業統治改革の進行、国内外の経営環境の変化による会社分割などの組織再編やM&A、新規事業の取り組み、海外事業の拡大などグローバル化の進展によって企業法務の役割が飛躍的に増大したことも法務専門部署拡充の背景にある。
食品会社の法務部長は「最近は訴訟などの事後的対応や予防法務に加えて、会社法の施行への対応や買収防衛策、内部統制システムの整備など経営の根幹に関わる重大案件にかかわるようになっている」と語る。
仕事量の増加に伴う法務部門の拡充のもう一つの背景として、すべての案件を外部の法律事務所に任せていては費用も莫大になるという事情もある。
法務職の仕事は基本的に各事業部門の法律相談を行うことであるが、通常の業務としては
(1)取引先など顧客との間で締結する契約書のひな形を作成業務や事業部門の契約書の審査
(2)株主総会の召集通知や議案の作成などの実務や取締役会、監査役会、役員会の運営実務
(3)コンプライアンス上のガイドラインの作成や社内教育
――などがある。
そのほかに合併・買収や事業の売却、資本参加などの法律にかかわる戦略法務や、海外現地法人の設立・撤退・買収のほか国際交渉の業務もある。
もちろん、不祥事案件の処理もある。金融証券取引法違反のインサイダー対応、独占禁止法、労働法務の対応、業界に関係する法律の対応など多岐にわたっている。