小宮一慶氏が分析・解説
古賀氏の話から、中間管理職の人たちに学んでほしい点が2つほどある。
その一つ目が、どのような人の話であっても真摯に耳を傾けることだ。知ったかぶりをしていても、問題は解決しない。「わからないものは、わからないと言えるようになったのは、自分にとっては、ある種のブレークスルーでした」という言葉は、初めて部下を持った上司の人たちに特に覚えておいてもらいたい。
近畿日本鉄道の中興の祖である佐伯勇氏は「独裁すれども独断せず」を貫いていた。最終的には自分で決断を下す。しかし、必ず衆知を集めてから決めていた。そして、一度決めたことは必ず最後までやらせる独裁者という姿勢を貫いていたのだ。
もう一つは定点観測の重要性である。古賀氏は新しい見方を身につけるために、フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルといった海外の異質の媒体を活用している。違った視点で定期的に物事を見るようにしておけば、偏った考えに陥る危険性は小さくなる。また、自分の仮説が正しいのかどうか、再検証もしやすい。
私にとっての定点観測が何かというと、日本経済新聞月曜版の「経済指標」だったり、出張途中の新幹線の席の込み具合だったりする。そこで気がついたことを手帳にメモし、後で見返すようにしている。すると頭のなかの引き出しが整理され、世の中の変化を察知できるようになっていく。
1957年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現職。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。