奈良雅弘氏が分析・解説
経済のグローバル化に伴い、日本人のコミュニケーションのあり方が変化を求められていることは確かである。
あ・うんの呼吸でわかりあえる「高コンテキスト」な国内社会とは違い、「低コンテキスト」な国際社会では、みずから発信していかないと、存在がどんどん希薄化するのは間違いないからである。
ただそれは、「英語でスピーチする訓練を」といった表層的な対処で済む問題ではない。総括で述べたように、発信力は「伝え手」「伝える中身」「伝え方」の複合体であり、「人」「中身」「伝え方」で考えていくべき問題のはずである。
高コンテキストな環境においてさえ生産的でない人間が、厳しい低コンテキスト社会で生産的になれるはずもない。まずは人として確立せよ、そして伝えるべき中身をきちんと持て。そう叱咤されているように思えてならないのである。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。