暴力妻と暴力夫には違いもあります。男性の場合はほとんど理由もなく妻を殴りつける人も珍しくありませんが、女性の暴力には必ずと言っていいほど夫の側にも何らかの原因があるのです。

夫に対する長年の不満が夫婦喧嘩の際に噴出し、暴力にエスカレートすることもあります。不満の内容は、浮気や借金などの大きな問題とは限りません。「せきやくしゃみのときに手で口を押さえない」「食事の後に爪で歯をチッチッチッと掃除する」「風呂に入らずに寝床につく」など、小さな問題への怒りが5年も10年も積み重なり、あるときに爆発してしまうのです。

実はここに妻からの暴力を未然に防ぐヒントがあります。夫は「自分にも問題があるかもしれない」という前提に立ち、妻とのコミュニケーションを改善すればいい。「そもそも話し合いができないから暴力に発展するのだ」という反論もあると思いますが、暴力を避けるためには話し合いをする意思と工夫をしなければなりません。

私のお勧めは、年に1度か2度は日程を決めて、「夫婦棚卸し会議」を開催すること。いつも顔を合わせる間柄だからこそ、わざわざ時間をつくるべきです。そこで相手に直してほしいところ、自分がやりたいことなどをお互いに書き出して交換します。人間はすぐに忘れてしまうものなので、紙に書いておくことが必要です。

この会議を実施すると、妻が抱えている意外な不満や希望に気づくでしょう。特に、家事や育児に追われている専業主婦は、自由な時間が持てない割に社会的に認められないことにイライラを募らせている人が少なくありません。外に出ることで女性は大きく変わります。たまには旅行やコンサートなどに行ける環境を整えたり、パートタイムの仕事に就くことに賛成し応援することで、妻のストレスが解消される可能性があります。

妻が家具に八つ当たりするようになったら危険信号です。早めの話し合いによって、家族の平和とわが身の安全を図りましょう。

恋人・夫婦仲相談所所長、作家 二松まゆみ(ふたまつ・まゆみ)
会員1万3000人を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」を運営する夫婦仲コメンテーター。『夫とは、したくない.セックスレスな妻の本音.』(ブックマン社)など著書多数。
(構成=大宮冬洋)
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