「峻別と集中」では、日本全国に展開してきたホテルやスキー場、ゴルフ場を徹底的に精査した。05年2月から現在までの間にホテルは売却や廃業、営業中止などで80カ所から50カ所、ゴルフ場は52カ所から31カ所、スキー場は35カ所から10カ所に絞り込まれている。
06年2月、後藤は、それまで独自でリゾート開発を進めていたコクドをプリンスホテルに吸収合併させ、さらにグループ全体の持ち株会社「西武HD」を設立。その傘下に西武鉄道とプリンスホテルを置いた。グループ一体で経営改革に取り組める組織づくりをしたのだ。
しかし、組織再編や資金調達だけでは経営再建は進まない。後藤が社長就任当初から感じていたのは、ソフト面の経営改革が急務ということだった。
「僕が西武に来たときに驚いたのは、社員たちがバラバラだったことです。当時の西武鉄道グループは不動産やリゾート開発を行うコクド、西武鉄道、プリンスホテルを中心にグループが形成されていた。しかしグループ内の人事交流がなく、社員同士の面識もなかった。社員間の仲はむしろよくなかったといってもいいかもしれない」
そこで後藤は、グループ再編と同時に経営理念や社員の行動指針となる「グループビジョン」を制定する。そしてグループビジョン実現のために、どんな施策が必要かをグループ社員間で話し合う機会を設け、後藤自身がことあるごとに「グループ社員が一丸となって取り組んでいくこと」や「風通しのいい職場づくり」「職場は一人ひとりが築き上げていくもの」と訴え続け、毎年社員に対して定点アンケートなども実施した。そのほか、内部統制基本方針を定めてコンプライアンス体制を整備し、経営改革の浸透を図るなど、上場に向けたソフト面の意識向上を行った。
ところが、経営が軌道に乗り始めていた09年、リーマンショックの影響で連結当期純利益は赤字に転落する。