再建当初は「貸し渋り」に「社員バラバラ」
西武グループ(現・西武HD)中核企業である西武鉄道は、2004年3月1日、総会屋に対する利益供与事件で役員が逮捕され、10月13日には、コクド(リゾートエリアのプリンスホテルなどを所有運営)とプリンスホテルが保有していた西武鉄道株を他人名義で保有する、有価証券報告書虚偽記載が発覚。オーナー経営者だった堤義明がグループ全役職を辞任し、12月17日、西武鉄道の上場廃止が決定した。
その後、西武グループの再編成を決定する西武グループ経営改革委員会が設置され、メーンバンクであるみずほフィナンシャルグループの代表として委員に就任していたのが、西武グループの再建から再上場を陣頭指揮してきた、現・西武HD社長の後藤高志だった。
後藤は05年2月1日に西武鉄道の特別顧問に就任した。
特別顧問就任の記者会見で後藤は自らに言い聞かせるように「朝のこない夜はない。1日も早い再生に従業員と力を合わせて全力を尽くす」と語ったが、目の当たりにした現場には難問が山積だった。
「取引金融機関の中には貸し渋りや貸しはがしをするようなところもあった。飛行機に例えるなら、厚い雨雲の中に飛行機が入って視界不良、ダッチロール状態でコントロールも利かない。とにかく急上昇して雷雲の上に脱出しなければならない状態だった」
そこで後藤は、財務面の改善と不良資産の圧縮を断行することを決断する。
05年8月に持ち株会社によるグループ再編を決定すると、11月には米大手投資ファンドのサーベラス・グループおよび日興プリンシパル・インベストメンツと資本提携し、総額1600億円の資本増強を受ける。それとともに「3カ年事業計画」を発表し、「峻別と集中」「企業価値の極大化」の2大コンセプトのもと経営改革を進め、西武HDの経営再建を進める方針を打ち出した。