学校が満足させるべき顧客は誰か

誰が顧客か。ここは、大学にとっても考えどころだ。どの視点をとるかで、つまり「学生の期待を満足させる」のか、「学生を送り込んだご家族の期待を満足させる」のか、はたまた「社会の期待を満足させる」のかによって、各教育機関が果たすべきミッションは異なる。あまり変わりはないように思われるかもしれないが、だいぶ違う。それは次の第二の問題に関連する。

非営利組織によるサービスのCSが抱える第二の問題とは、サービスが終わった時点で顧客に満足度を尋ねることで、サービスの質を把握できるかどうかに関わる。非営利組織のサービスが、レストランのそれと異なるのは、学生や患者の要望に応えることは大事だが、それがいきすぎて迎合するようになってはいけないという点である。

教育世界で、パワハラがよく問題になる。許し難いパワハラの話も聞かないではないが、教育には潜在的にパワハラ要素があることも事実だ。教員は、学生に対して、「先人の書いた論文は一字一句、思い出すことができるくらいにしっかり読め」と言って指導する。しかし、しっかり読めるようになると今度は一転して、「先人の言ったことをそのまま受け取らずに、行間を読んで、先人が本当にいわんとしたことを理解せよ」とも言う。学生にしてみれば、「一字一句間違いなく読めと言って、それができるようになったら、行間を読むことが大事だと言う。日によって言うことが違う」と思うだろう。学生にしてみれば、教師というパワーを笠に着て、自分をハラスメントしているのではないかと疑うかもしれない。

しかし、それが教育の1つの側面なのだ。学生の5年後10年後を考えると、一字一句間違いなく覚えることも大事だし、行間を読むことも大事なのだ。それは矛盾しているようだが、知的に成熟するとそのことの意味がわかる。