ここまで、01~06年に雇用状況が相対的に良好だった7都県に目を向け、そこで観察された「全国的動向とは異なる特別な動き」をピックアップした。それらの「特別な動き」は、7都県で作用した固有の雇用改善要因だとみなすことができるが、表2は、それをまとめたものである。
表2では、都道府県別従業者数増減の3つのパターン(「大半ないしすべての都道府県で従業者数が増加した産業」「従業者数の増減が都道府県ごとにまちまちであった産業」「大半ないしすべての都道府県で従業者数が減少した産業」)に即して、産業を分類してある。ただし、06年の全国の従業者数が100万人に満たなかった産業(複合サービス事業、農業、林業、漁業など)は、表示対象としていない。
また、06年の全国の従業者数が100万人以上の産業であっても、相対的に雇用状況が良好であった7都県に固有の雇用改善要因がとくに作用しなかった産業(建設業、運輸業、金融・保険業、公務)は、表から除外してある。これらの点をふまえて、表2にもとづき、7都県で作用した雇用改善要因を摘出すると、次のようになる。
(1)「大半の都道府県で従業者数が減少した産業」である飲食店・宿泊業での例外的な従業者数の増加ないし従業者数減少率の低位(7都県中6都県で作用)。
(2)「従業者数の増減が都道府県ごとにまちまちであった産業」である不動産業での従業者数の増加(7都県中5都県で作用)。
(3)「大半の都道府県で従業者数が増加した産業」であるその他サービス業での従業者数増加率の高位(7都県中4県で作用)。
(4)「従業者数の増減が都道府県ごとにまちまちであった産業」である教育・学習支援業での従業者数増加率の高位(7都県中4都県で作用)。
(5)「大半の都道府県で従業者数が減少した産業」である製造業での例外的な従業者数の増加ないし従業者数減少率の低位(7都県中3県で作用)。
(6)「従業者数の増減が都道府県ごとにまちまちであった産業」である情報通信業での従業者数増加率の高位(7都県中3都県で作用)。
(7)「すべての都道府県で従業者数が増加した産業」である医療・福祉での従業者数増加率の高位(7都県中2県で作用)。
(8)「大半の都道府県で従業者数が減少した産業」である卸売・小売業での例外的な従業者数の増加(7都県中1県で作用)。
(1)~(8)は、01~06年の日本において、雇用改善にかかわる地域間格差を生むポジティブな要因になったと考えられる。雇用創出につながる地域経済再生のメカニズムを析出するヒントは、(1)~(8)によって与えられているとみなすことができる。