世界的に注目されている消費者によるイノベーションだが、日本では、あまり興味を持たれない。しかし、日本にも普及する素地は十分にある──。今回から連載を担当する神戸大学の小川進教授は、そう主張する。

日本の経営者が興味を持たないイノベーションとは

消費者イノベーションの例 (N=104)
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消費者イノベーションの例 (N=104)

先日、ある大手食品メーカー社長と会った。「先生、今度、学外向けに講演をされますね。どんな内容ですか」との質問。「消費者が製品イノベーションを実際、どの程度行っているかということについて話します」。そう私が答えると彼は特に関心を示すことなく別の話題へと話を移していった。

こうした経験をこれまで何度したことだろう。消費者が製品革新していることに興味を示し私の話を真剣に聞こうとする経営者は残念ながら日本にはほとんどいない。

理由を考えてみた。まず、「消費者による製品イノベーションの実物」を見ると、モノづくりのプロからすれば自分たちの完成水準と比べて欠点の多い粗悪品にしか見えないということがあるだろう。消費者がつくり上げた製品の例を写真で見ると間に合わせ程度の部材や素材をつなぎ合わせている場合が多い。お世辞にも「洗練されている」と呼べないものばかりだ。そうした見かけに目を奪われると、製品の背後にある消費者が直面する問題や解決上の工夫を見抜くには至らないだろう。