消費者の製品創造・改良への投資はメーカーの2.3倍!

メーカーとして自社技術やノウハウを活用し自らが考え創造した製品を市場に提供し、競争優位を確立し存在感を高めたい。消費者が製品イノベーションを行っている製品分野はあるかもしれないが、わが業界はそれに当たらない。消費者の絶えず先をいっているのがわが社、わが業界の特徴である。こうした様々な思いや願いが経営者の頭に浮かび、消費者による製品イノベーションに対する関心がそれほど大きくなることなく現在に至っているのではないかと思う。

そうした私を取り巻く日常とは対照的に、消費者を含む広い意味でのユーザーが製品・サービス革新を行っている現象はイノベーション研究の分野で近年世界的に注目を集め、理論と実証の両方で研究成果が急速に蓄積され始めている。

昨年から今年にかけて英国で「消費者による製品イノベーション」に関する実態調査が世界で初めて実施され、結果が発表された。調査を実施したのはこの分野の先駆的研究者エリック・フォン・ヒッペル教授(MIT)を中心とするグループで、英国に住む18歳以上の1173名の消費者に対し電話調査を行った(詳しくはvon Hippel,de Jong, & Flowers2010 “Comparing business and household sector in consumer products”を参照)。

「過去3年間に仕事以外の目的でゼロから製品創造するか既製品に手を加え製品改良したことがありますか?」。この問いに対する回答は次のようなものだった。「製品創造の経験あり」と回答した人が1.4%、「製品改良の経験あり」が4.2%、「両方経験あり」が0.6%だった。つまり全体で6.2%の回答者が製品創造あるいは改良の経験があると回答した。

もちろんここで製品創造や改良の事例として取り上げられたものは「独自性あるいは新規性あり」と判断できるものだけだ。例えば、回答者が自作品とほぼ同じと思えるものが誰かの自家製品(home-made)や市販品としてすでにあることを知っていた場合には調査対象から除かれているし、素材の付け替えやソフトウエアの更新といったものも同様だ。