日本経済再生のうえでも欠かせない、地域経済の活性化に有効な手段はあるのか。従業者数の増減のデータに日本の地域経済復興のヒントがある、と筆者は説く。
雇用が増えた4都県で何が起きたか
2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況が長期化するなか、人口減少、高齢化、産業構造転換という「三重苦」に直面する日本の地域経済は、疲弊の色を濃くしている。そもそも、地域経済の苦境は、リーマン・ショックが起こる前から生じていた。
地域経済の活力の有無を測るうえで最も重要な指標は、従業者数の増減である。雇用状況の良否を反映する従業者数の増減については、総務省統計局の「事業所・企業統計調査」から、そのデータを得ることができる。
同調査の最新の報告書である「平成18年事業所・企業統計調査」(08年)によれば、01~06年には、全国47都道府県のうち43道府県で雇用規模が縮小し、日本全体の従業者数が5年間で2.5%減少した。
つまり、「いざなぎ越え」と呼ばれた02年2月~07年10月の69カ月間に及ぶ好況局面の下でも、地域経済は不況感を克服できなかったのであり、そこに、リーマン・ショックが追い撃ちをかける形になったわけである。
地域経済が苦境から脱するためには、どうすればいいか? この問いに対する答えを得るためには、01~06年の間、例外的に従業者数が増加した沖縄県・愛知県・東京都・埼玉県の4つの都県で何が起きたかに目を向けることが、ヒントを与えるであろう。
じつは、この5年間には、これら4都県以外にも3つの県(滋賀県・広島県・奈良県)で、従業者数が減りはしたが、その減少率が1%未満にとどまり(奈良県は0.9986%)、雇用規模があまり縮小しなかった。表1は、雇用状況が例外的に良好であった右記の7都県の産業別従業者数増減率を、全国のそれと比較したものである。
これら7都県においては、全国的動向とは異なる特別な動きが見られたために、相対的に良好な雇用状況が実現した。表1にもとづき、その「特別な動き」を、各都県について確認しておこう。
01~06年の従業者数増加率が4.5%と全国最高であった沖縄県では、飲食店・宿泊業、卸売・小売業、製造業の従業者数が例外的に増加したこと、その他サービス業や情報通信業の従業者数増加率が全国平均をかなり上回ったことが、大きな意味をもった。また、農林水産業の従業者数が伸びたことも注目される。