沖縄では12業種で雇用が改善

(1)~(8)のうち(8)の卸売・小売業については、沖縄県の例外ぶりが、とくに顕著である。(4)、(6)、(7)についても、地域特性が強く作用していると思われる。愛知県・東京都・埼玉県の雇用改善要因となった(4)の教育・学習支援業については大都市ないし大都市周辺という特性が、埼玉県と奈良県の雇用改善要因となった(7)の医療・福祉については大都市周辺という特性が、それぞれ作用している。

また、沖縄県・東京都・埼玉県の雇用改善要因となった(6)の情報通信業については、雇用増加が特定の地域に集中する傾向がみられる。

このほか、(2)の不動産業における雇用増加については、雇用改善要因というよりは、他の要因による雇用増加の結果とみなすほうが、正確かもしれない。以上のように考えると、雇用状況が相対的に良好だった7都県の経験から導かれる全国的に汎用性をもつ教訓は、(1)(3)(5)にかかわるものだということができる。

(1)(3)(5)にかかわる「雇用創出につながる地域経済再生のメカニズム」について、筆者は、『地域からの経済再生─産業集積・イノベーション・雇用創出─』(有斐閣、05年、連合総合生活開発研究所との共編)と『地域再生 あなたが主役だ─農商工連携と雇用創出─』(日本経済評論社、10年、篠崎恵美子との共著)という2冊の書物で、詳しく検討した。そこで析出したのは、

(I)産業集積の活力維持→製造業の健闘→製造業関連のサービスビジネスの拡大→製造業関連のサービス業における雇用拡大→商業・飲食業における雇用拡大
(II)第三次産業の革新→まちづくりの進展→外部からの来訪者の増加→商業・飲食業における雇用拡大

という2つのメカニズムであった。これらのうち(I)は前記の(1)(3)(5)のすべてと、(II)は(1)と、深く関連している。苦境に立つ地域経済が再生をはたし、雇用創出を実現するための王道は、(I)ないし(II)のいずれか(あるいは双方)のメカニズムを作用させることにあるといえる。

(平良 徹=図版作成)