早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏

【入山】具体的にいうと?

【伊佐山】大企業は積み上げてきたブランド・エクイティがあるから、簡単に冒険できません。おもしろいアイデアが出てきてもボツになる可能性が高い。それならば、僕たちが代わりにそのアイデアにお金を出して実行してあげればいい。失敗したらWiLのせいで、企業はノー・ダメージ。うまくいったら、ビジネスとして買い戻してもいいし、独立企業として育てることもできる。大企業にとって僕たちは“都合のいいR&Dセンター”なわけです。

【入山】その仕組み、おもしろいね。

【伊佐山】豊富なリソースは眠っていますが、残念ながら大企業は自分で自分を変えられない。世界で勝負できるものを生み出すには、大企業を外からシェイクする仕掛けが必要です。

【入山】問題は、大企業で眠っている人たちを、どうやってその気にさせるのか。そこはどう考えていますか。

【伊佐山】たとえばシリコンバレーのうちのオフィスにレンタルできてもらいます。そこでいろいろやって様子を見た後、会社に戻るのか、ベンチャーでやるのかを判断してもらいます。まったく知らないベンチャーではなく、自分の会社の親戚のようなベンチャーにレンタルでいくので、最初のハードルは低い。もしダメだと思えば、元の会社に戻る道もあります。

【入山】撤退の道が確保されているのは重要です。世界各国の倒産法を比較すると、会社を潰しやすい倒産法を持つ国のほうが起業しやすいという研究があります。これは個人のキャリアも同じ。失敗しても次のビジネスに移れたり、前の会社に戻れたりするほうが、飛び出しやすい。

【伊佐山】アメリカ人はみんなリスクを取ってすごいといわれますが、向こうは失敗してもすぐ再トライできる環境があります。

【入山】そうですね。伊佐山君の大企業に向けたアプローチはわかりました。では、日本のベンチャー企業についてはどう見ていますか。

【伊佐山】国内路線が強すぎます。上場しても大半の時価総額は100億円以下。アメリカとは一ケタ違います。