このままでは日本の科学技術は衰退する

2010年末には2人の日本人化学者がノーベル賞を受賞した。21世紀になってから毎年のように日本人の受賞が続いている。日本人としては誇らしいかぎりだ。科学技術へのこれまでの投資が基礎科学の分野で果実を生み出しはじめたことを実感させる出来事だ。しかし、その陰で、今後の科学技術政策に関して危惧すべきことがいくつかある。一つは、最近の科学技術政策への不安である。現在の学術的成果は、過去の科学技術政策の産物であり、最近の科学技術政策ではよい成果が期待できないのではないかとという危惧である。最近は研究費の配分が成果をもとに行われるため、研究の継続性の担保が難しくなっているし、若手の研究者の地位も不安定になっていて、息の長い研究に取り組めなくなっていると嘆く研究者が少なくない。もう一つの不安は、産業界において、必要な分野への研究開発投資が行われていないのではないか、あるいは、技術開発の成果がうまく生かせていないのではないかと感じさせる例が増えていることである。