コミュニティが生まれづらい、都市の人間関係。そんな中、従来とはまったく異なるアプローチで都心に人を集める「大学」がある。新時代を切り開く挑戦として、筆者は注目する。このままでは日本の科学技術は衰退する

キャンパスも校舎も入学金も授業料もなし

社会的なマインドをもった企業が世間で注目を集めている。高度成長期には「生きていくため」にまい進するだけだった社会が、「自分の人生を考え直す」期を経て、「人のために」という期へと、流れとして移っているという話は、なんとなく納得できる話である。とくに阪神・淡路の大震災で多くのボランティアが駆け付けて積極的な住民支援を行ったことは記憶に新しい。そうした流れの中で社会志向の企業が注目を集める。

そのひとつに、ある限定された地域で大学を開設し運営していこうという複数の動きがある。とは言っても、われわれが思うところの大学ではない。キャンパスもなければ、校舎もない。正規の教員もいなければ、入学金も授業料もいらない。そうした学びの場が、東京都心の真ん中に生まれ、1万人を超える人が登録し受講する(水越康介「シブヤ大学における学びと関係性」、左京泰明講演録「シブヤ大学による地域活性化~新しいまちづくり・関係創造の取組~」流通科学研究所リサーチノート)。