日本の大企業とベンチャーの橋渡し役として、いま大注目の伊佐山元氏。アメリカで活躍し、昨年から早稲田大学で教鞭を執る気鋭の経営学者・入山章栄氏。2人は東京学芸大学附属高校の同級生。日本人の働き方はどう変わるか。どう変わるべきか。白熱対談120分!
大企業で眠っている人たちを外からシェイクする仕組み
【入山】伊佐山君は米大手ベンチャーキャピタルDCMで活躍した後、昨年、日本最大の3億ドル規模のファンドWiL(出資者はソニー、日産自動車、全日空など10社を超える大手企業)を立ち上げました。日本企業とアメリカ企業をよく知る立場から見て、両国の働き方はどこに違いがありますか。
【伊佐山】一番の違いは、「ヒト・モノ・カネ」の構造です。アメリカの場合、優秀な人がベンチャーを起こして、お金を呼び込み、成長したら売却して、またベンチャーをやるという地域が、シリコンバレーを筆頭に何カ所かある。ヒト・モノ・カネがベンチャーを通して回っている構造です。一方、日本は優秀な人の大半が大企業に集まります。たとえばソニーはマスコミにいろいろと叩かれていますが、いまでも優秀な人を採っている。日本はアメリカと比べてM&Aやベンチャーが少ないといわれますが、構造が違うからあたりまえ。大企業の中に優秀な人がいるのに、外から買う必要はないでしょう。
【入山】大企業に優秀な人が集まっているというのは同感です。とくにR&D部門は顕著ですよね。僕が三菱総合研究所で某自動車メーカーを担当していたとき、経営企画部に50代のベテラン社員が異動でやってきました。話を聞くと、少し前まで研究所でドアを開発していたという。つまりその会社では、研究所に優秀な人材が集まっていて、長年開発だけやってきた人がある日突然本社に異動させられ、経営企画をやっている。これは裏を返すと、優秀な人材を大企業が活かしきれていないということでもあるけれど……。
【伊佐山】そこが問題です。知恵やセンスがあっても、レイヤーが多すぎて潰されてしまいます。たとえば現場の課長から余計なことをするなといわれたり、予算がないからと押さえつけられてしまう。いま私たちがやろうとしているのは、そのレイヤーを取り除いて、駆け込み寺になってあげることです。