「経済の安倍」を打ち出さなければ浮上しない
【塩田】最近の10年前後を振り返って、現在の日本経済はどういう状態と見ていますか。
【山本】いまは15年以上にわたるデフレから脱却できるかどうかの瀬戸際で、非常に重要で微妙な時期と認識しています。失敗すると、もう二度とデフレから脱却できない。デフレに戻るか、スタグフレーション的な状況になるかです。成長はなくて物価が上がっていくという最悪の状況になると思います。だから、増税政策は慎重に考えなければいけない。
【塩田】その瀬戸際の時期に、安倍首相が再登場しました。「デフレ・円高解消を確実にする会」で経済の勉強を重ねていた時代と比べて、どう変化・成長を遂げましたか。
【山本】あの頃は時間もあったので、熱心に勉強会に参加していました。会での挨拶も、日銀に対する疑問点など、非常に的確に問題点を捉えていた。浜田先生や岩田さんの話を聴き、先生方の本をじっくり読んでいますね。それ以前は、安倍さんが経済について話をするのはほとんど聞いたことがなかったので、びっくりしました。
【塩田】「外交・安全保障・憲法」系といわれ、経済は得意分野ではなかったのに、当時、なぜ脱デフレや経済再生など、経済政策に関心を持つようになったのでしょうか。
【山本】私は最初に「増税によらない復興財源を求める会」の会長をお願いするとき、安倍さんに「本当に再起するためには『憲法や安全保障や教育問題の安倍』ではダメです。『経済の安倍』を打ち出さなければ絶対に浮上しませんよ」という話をした。安倍さんは「そのとおりだ」と言った。多くの人々は自分の生活が安定して初めて憲法などの問題について考えてみようという感じになる。安倍さんは第1次内閣で失敗した後、いろいろと考え、その点をきちんと認識したのではないでしょうか。
【塩田】第1次内閣時代の安倍首相をどう見ていましたか。
【山本】私は当時、経済産業副大臣を務めていましたが、あまりにいろいろなことに手を出しすぎているという感じでした。もっと経済に尽力してもらいたいという気がしました。安倍さんは以前からずっと日銀批判をしていて、官房長官時代から日銀の問題が意識にあったと思いますが、じゃあどうしたらいいか、そのときはまだわかっていなかったと思う。私たちとの勉強会で先生方の話を聴いて、ピンときたんでしょうね。
【塩田】経済政策への取り組み方は、第2次内閣になって大きな変化がありましたか。
【山本】 180度違います。日銀総裁に黒田東彦さんを起用した。国会答弁もしっかりしています。非常に心強いですね。この2年、私も予算委員会に入りましたが、安倍首相が一番、経済がわかっている。答弁を聞いていると、よくわかる。完璧に理解していますね。