アメリカとEUはどう出るか

スコットランドの住民投票の影響はアメリカにも及んでいて、今、ハワイでも独立運動が起きている。カメハメハ大王からハワイを略奪したのはアメリカであり、独立したら自分たちはもっと豊かになれると独立派は主張する。アメリカ政府の意向で軍事基地が置かれているが、観光だけで十分に食べていける。もし軍事基地を置くなら、米海軍だけではなくて中国や日本の海軍にも貸して賃料を取ったほうがいい、と。

注目すべきはカタルーニャの住民投票で、もし住民投票が実施されれば、かなりの確率で独立派が勝つだろう。カタルーニャの人々はマドリードを死ぬほど嫌っているし、人口的にも経済的にもカタルーニャは独立しても十分にやっていけるからだ。しかしスペイン経済の18%を占めるカタルーニャの独立をマドリードの中央政府は絶対に許さないだろう。

私は住民投票の前にアメリカとEUにはクジを引かせるべきだと思っている。つまり、住民投票で独立派が多数を占めた場合、カタルーニャ独立を認めるのか、認めないのか、である。

カタルーニャの場合、独立が決まったら、さまざまなサボタージュが起こって内乱のような状況になりかねない。マドリードが軍を派遣してカタルーニャを制圧するような状況になれば、アメリカやEUの世論は独立支持に向かうだろう。凄惨な結末を防ぐ意味でも、アメリカとEUには事前に態度を表明しておいてもらいたい。

いずれにせよ、もしアメリカやEUが民族自決を尊重してカタルーニャの独立を認めるということになったら、「では、なぜクリミアの住民投票には反対したのか」という疑問が湧いてくる。

クリミアの住民投票では、国家が認めない独立運動、自主投票は憲法違反であり無効というウクライナ政府の主張をアメリカとEUは支持した。それがグローバルスタンダードというなら、どこの州も地域も独立はできなくなってしまう。その場合コソボではセルビアが認めない独立をけしかけたし、インドネシアが認めない東ティモールの分離独立も助けた、などとの整合性を説明しなくてはいけない。

中央政府に違憲と判断されたカタルーニャの住民投票(意思表明)はアメリカとEUの思想が一貫しているかどうか、そして21世紀の国民国家のあり方を国際社会に問う試金石になるだろう。

(小川 剛=構成 ロイター/AFLO=写真)
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