実際、欧米やアジアなどから戦闘員や義勇兵として加わるムスリムは後を絶たない。日本人大学生がシリアへの渡航を画策した事件があったが、すでにイスラム国に日本人も参加しているとの未確認情報もある。

砂漠の民がネットの民に代わり、それが現実世界を行き来して洗脳や戦闘訓練が行われている―。このような時代状況は国民国家の枠組みで思考してきた現代人、特に島国育ちの日本人にはなかなか理解し難いものがある。

イスラム国はなぜ台頭したのか。歴史の因果を辿れば、アメリカがつくり出したといえる。9.11テロとの関係について十分な考察がなされないまま、「悪の枢軸」と名指ししてイラクを攻撃、フセイン政権を打倒し、フセイン大統領を裁判にかけて処刑した。

独裁者だったにせよ、フセインは曲がりなりにも3種混合ワクチンのような国を一つにまとめてきた。その独裁者を排除したら、アラブの春ならぬアラブの混乱を招くというお決まりのパターンで、イラクはスンニ派、シーア派、クルド人の3つに分裂した。そこに乗じてシリアなどから攻め込んできたのがスンニ派の過激派組織ISIS(ISIL)である。

サウジアラビアなどはスンニ派のフセイン政権が倒れた隣国イラクでシーア派が主流派になることを嫌って、ISISのようなスンニ派の過激派組織を陰で支援してきた。つまり、イスラム国はアルカイダと同じくアメリカやサウジが育てたようなものなのだ。