妻や家族を介護に巻き込む方法

我が家の場合、妻は「人に奉仕することを喜び」とするタイプではありませんでしたが、とあるきっかけで私の介護のサポートをしてくれるようになりました。

前回(第13回 http://president.jp/articles/-/13514)、当欄で書いたデイサービスの一件です。私が仕事で早朝から1日、出かけることになった。介護者ゼロの「空白」を埋めるべく、父をデイサービスに送り出すことにしました。

家の戸締りの必要もあり、妻に出社時間を遅らせてもらい、その見送りを頼んだわけです。しかし、父が出発直前にデイサービスに行くことを拒否し、結局、妻はその後の面倒を見るために会社を休むことになりました。

「父の介護は私(筆者)の仕事」とばかりに第三者的立場でいた妻が、その日を境に少し変わったのです。食事をつくって持って行ったり、時折、父の様子を見に行ったり、というようなことをし始めました。

要介護者が家にいるという状況に否応なしに直面したことで、その意識が芽生えたのでしょう。家族に介護のサポートをしてもらいたい場合、彼らを上手に巻き込むような状況を意図的につくるのも、ひとつの方法かもしれません。

そういう私も人に奉仕することに喜びを感じるタイプではありません。

それでも約1カ月半という短い期間ではありますが、精一杯父の介護をしました。もちろんそこには親子の情、育ててくれた父に対する感謝の思いもあります。しかしそれだけではありませんでした。

あくまで個人的なレベルに過ぎませんが、父が突然寝たきりになり介護が必要になったときの心理を自分なりに振り返ってみます。

たとえばシモの処理。

「ついにこの時がきたか」とは思いましたが、そう苦痛には感じませんでした。初めてのことでもあり、どういう手順で処理したらいいか解らず、慌てうろたえたことは確かですが、行為そのものから逃げたいという思いはありませんでした。

自分が処理しなければ事態は前に進まない、という感じです。そして回数を重ね、処理がうまくできるようになるにつれ、やりがいさえ感じるようになりました。私自身も父が寝たきりになり、その介護をするのは自分しかいないという状況に直面したことで、できるだけのことはしようという意識と覚悟が芽生えたのです。

各家庭が抱える事情はさまざまです。親子関係がうまくいっていないケースもあるでしょうし、性格的に介護などできないという人もいるでしょうから、一概には言えませんが、親が要介護になるという事態に直面したら、多くの人はそれを受け入れ対応する努力をするはずです。

確かに大変ですが、その時が来たら、「自分なりになんとかする」のが介護というものだと思っています。

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