運・不運は偏差値とは関係ない
高橋氏は、自らが政治経済学部出身ということが昇進や昇格に有利に働いたとは思えないと振りかえる。
「同期入社で、早稲田卒は多かったのですが、例えば、4~5年目の頃で昇格ではすでに多少の差がついていました。決して、早稲田の政経出身者が同じスピードで一斉に上がるわけではないですね」
高橋氏の昇格のスピードは、20代の頃から多少早かったようだ。その理由を「この仕事が自分の性格などにたぶん合っていると思うのです」ととらえる。
昇格については、むしろ、巡りあわせのほうが大切に思えると指摘する。巡りあわせとは、配属される部署や、上司や仕事の内容などを意味するのだそうだ。
「これはほかの会社にもいえることでしょうが、20~30代前半の頃は上司と合わないと、辞めてしまう人がいますね、私は札幌や大阪にいる頃、数人の上司に仕えましたが、よくしていただきました。
配属されたのが、札幌と大阪だったこともよかったのかもしれません。正直なところ転職活動をするのであれば、転職機会が多い都内にいたほうが有利と思っていました。東京以外の配属となり、逆に、仕事に専念することができたのです」
巡りあわせとして、さらに挙げたのが、運だった。高橋氏は、札幌や大阪にいる頃、営業にかかわっていた。中小企業やベンチャー企業の経営者らと会い、上場などに向けて支援を申し出るのが、一つの仕事だ。
「この仕事は、市場で競争力のある製品や商品をもち、上場などができうる会社の経営者などと巡り会えるか否かが、大切なのです。今思えば私は、出会う経営者や会社に恵まれていたと思います。担当する営業エリアも、運がよかったように感じています」
この運・不運は、偏差値ランキングとは関係なく、誰もがぶつかる壁といえる。そのとき、克服できる人とできない人にわかれていく。そのあたりをどのように分析するか、と尋ねてみた。
高橋氏は、「その人の性格や価値観などによるものが大きいのではないか」と答える。自らの性格は、こう分析する。
「時々、楽観的にもなるし悲観的にもなります。ただ、その比率が半々ということで、結果としてバランスがとれ、壁にぶつかっても何とか対処してきたのかもしれません。この仕事は世の中に必要な業務だと思っていますから、多少つらいことがあってもそこを精神的拠りどころにしています。
まず、自分の仕事に価値を見出すことが重要に思います。たとえ最初の巡りあわせが悪くとも、めげずに努力をしていけば、世の中とはよくしたもので、あとで大きな風は吹いてくると思います。大器晩成とは、そのような人のことも含まれるのかもしれません」