転職先を絞り込む場合には、その企業のビジネスモデルや仕事のやり方が、自分と合っているかどうかを調べることも重要になる。とくに大企業出身者が中小企業を目指す場合、オーナーや経営トップの才覚と品格について、クチコミや各種報道などから調べてほしいと中村氏はいう。
「トップの外面と内面をよく吟味すべきです。外では『人を大事にします』などと格好のいいことをいっていても、実際の経営ではまったく違うことをしている経営者もいます。入社してから『もうあの人のポリシーについていけない』と相談に来る人は多いです。離職率などのデータは優先して集めておくべきでしょう」
4人に1人は「挨拶回り」で就職
そもそも自分の持ち味とは何か、自分に合った会社とはどこかについて分析できる人は少ない。渡辺氏は「第3者からアドバイスを受けるべきだ」、中村氏は「『マイカウンセラー』を持つべきだ」という。
「人材紹介業」を営む企業は1万以上にのぼる。キャリアについて助言をする人間も、人材紹介会社からハローワークまで多種多様だ。いったい誰に相談すればいいのか。中村氏は「若い人よりも、事業会社でのマネジメント経験があるような人がいいでしょう」と話す。
「無料相談を標榜するカウンセラーはたくさんいますが、歩合制で紹介案件を増やすほど報酬が増えるという仕組みの人材紹介会社もあるので注意が必要です。とくに人材紹介一筋という人は、実務を把握していないケースがある。たとえば同じ『生産技術』でも化学と機械ではまったく違うんです。さらに大企業と中小企業の双方に籍を置いた経験のあるカウンセラーであれば、過大な夢を抱かせることなく適切なアドバイスができると思います」
転職先の情報は、あらゆるツールを使って集めるべきだ。まずはいろいろなサービスに触れてみることが重要だ。そのうえで、渡辺氏は「とくに有効なのが、友人関係、とくに前職での人脈です」と話す。
「会社を辞めてから3カ月以内に再就職が決まった人の約4人に1人は友人や知人の紹介がきっかけなんです。ですから会社を辞めたら、仕事の取引先を含め、あらゆる友人・知人に対して『挨拶回り』をすることです。その際、前向きな言葉で接するといいでしょう。『今回こういう事情で退職しました。元気に就職活動していますので、いい情報があったら教えてください』と溌剌とした感じで話す。そうすると場合によっては、『じゃあ、うちに来ないか』という話になるわけです」
こうした「挨拶回り」は、すぐに実行したほうが効果が高い。リストラのような状況で退職した場合には、腰が重くなりそうだが、半年、1年と間を置けば、さらに状況は悪くなる。長く決まらなければ、悲壮感が漂うようになり、相手側もなかなか声をかけられなくなる。時間を置いても、いいことは一つもない。
人脈活用については中村氏も「とにかくプライドをかなぐり捨てて、元上司を拝み倒して紹介してもらう、親類縁者に町会議員や有力者がいればそのツテを辿って探すぐらいの覚悟が必要」と指摘する。