1990年代の大半を米国で過ごした江田とインテルとの出合いは、帰国後に、インテルからマーケットリサーチ・マネージャーとしての誘いを受けたときだ。米インテルの創業者でCEOだったアンディ・グローブ氏の著書『Only the Paranoid Survive』(邦題『インテル戦略転換』)を読んで、常に危機感を持つ大切さを知り、そこに自らの価値観と似た部分を感じとっていた江田が、この話に引かれたのは当然だった。「持っていた印象は、とても勢いがあり、それでいて、半導体という社会基盤を担う製品を作る企業。面白そうな仕事ができそうだと感じた」
江田流の経営手法は、徐々に形づくられてきたようだ。
キーワードは、「俊敏な経営」と「柔軟な意思決定」。そして、「オープン・アンド・ダイレクト」だ。
「この業界は変化が激しい。順応性がますます重要になる。この仕事をやり抜きたいと社員が思える環境づくりが、リーダーにとって重要な役割。社員が、より自発的な考え方や、創造性のある考え方ができるようになると、企業の力はもっと強くなる」
社長然とする部分も必要だが、「近づきがたい人間にはなりたくない」と江田はいう。何かアイデアがあったり、何か困っているときに、私に気をつかいすぎて、無駄に時間が過ぎることを避けなくてはならないと社員にもいっているようだ。
現在、インターネットにつながっている機器は150億個。これが20年には500億個になるとされる。
「インテルのCPUを搭載した最終製品を使う人の半分は女性。にもかかわらず、製品企画やサービスを考える人が全員男性というのは、企業にとって、とても危険なことだと思うのです。市場が求めているものをつくるには、ユーザーニーズがわかっている人が、決定権を持ったほうがいいのは明らかです」
米本社社長は、レニー・ジェームズ。やはり女性だ。男女を問わず、時代に最適なディシジョンをする人が経営トップに選ばれる時代がすでに訪れている。
1988年早稲田大学第一文学部卒。90年米アーカンソー州立大学大学院修了後、米ペンシルべニア大学ヘルスシステム入社。2000年インテル入社。マーケティング本部本部長などを経て、13年10月より現職。