水素社会は「力いっぱい」やってくる

――ライバルメーカーも燃料電池車のロードマップを続々発表しています。瀧本正民氏(現トヨタ学園理事長)はトヨタ副社長時代、水素社会は我々が強引にたぐり寄せるくらいでなければ永遠にやってこないと言っていましたが、水素エネルギー利用は本当に進むのでしょうか。

文字通り、力いっぱいやっていきます。途中でやっぱりダメでしたなどということにはしません。先日、トヨタFCVのプロトタイプ公開のときに、さらに本格普及を目指すモデルを2020年に投入すると発表しましたよね。独BMWとのジョイントモデルで、さらにファンなクルマになることでしょう。

新しいモデルがまだ発売されていないのに、さらに次のモデルのことについて言及するなんて、普通のクルマでは考えられないことです。97年、トヨタは初代プリウスを発売しましたが、その時に次のモデルの話など欠片もしませんでした。水素利用を何としてでも前進させるという決意は持っています。

――まったく新しいモノづくりだけに、これからも様々な壁を乗り越えなければなりませんね。

今回のトヨタFCVにしても、システムを市販に耐えられるまでに小型・低コスト化し、そのうえでクルマとしても素晴らしいと感じていただけるようなものに仕立てるのは大変なことでした。新しいモノを作る時、最初からフォローの風が吹いているとは限らない。むしろ逆風が吹いていることのほうが圧倒的に多いですよね。それに立ち向かうのは怖くもあるし、度胸もいる。でも、エンジニアとしては、逆風に耐えて頑張っていれば強さが出てくる。どんなに困難な課題でも、それが理にかなったものであれば解決策は生まれるもので、苦労して頑張れば頑張るほど良いものになっていく。

頑張り続けるのに一番必要なのは、こういうことを言うのは照れくさいんですが、パッション(情熱)です。来春、皆様の前に新世代の燃料電池車を送り出すことができたあかつきには、ぜひわれわれエンジニア陣のパッションの片鱗を見出してもらえれば、それが何よりの喜びです。

――ありがとうございました。
(井元康一郎=写真)
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